「告白」あの事件の当事者

子宮頸がんワクチン1回目の摂取で生理が来なくなりました

子宮頸がんワクチン被害者の酒井七海さん
子宮頸がんワクチン被害者の酒井七海さん(提供写真)
酒井七海さん(24歳)=子宮頸がんワクチン被害者

 2011年2月、高校1年生だった酒井さんは、高校で配られたチラシや、市役所からの子宮頚がんワクチン接種の案内を見て「ワクチンで防げるがんなんてあるんだ」と驚いたという。子宮頚がんは、性的接触でヒトパピローマウイルス(HPV)に感染し発症する。性交渉未経験の10代前半での接種が推奨されている。

 酒井さんは子供のころから健康で、病院に行くのは予防接種やケガの時だけ。中学時代は、県内のピアノコンクールで金賞を受賞し、進学校に入学後は、琴部の部長を務めた。豪州語学研修など課外活動も精力的にこなし、弁護士になる夢をかなえるため勉学に励んでいた。まさか子宮頚がんワクチンを接種したことで人生が一変するとは……。

「1回目の接種で順調だった生理が来なくなり、2回目の翌日の夜、入浴直後に失神し40度の高熱が出ました」

 接種した医師は「(接種と)関係ないと思うが副作用報告はする」と言ったが、後に国が実施した追跡調査で、製薬会社が「回復」に分類していたことが発覚した。

「薬害は、遠い世界の出来事でなく、自分の生活と隣り合わせにある」とー、酒井さん
「薬害は、遠い世界の出来事でなく、自分の生活と隣り合わせにある」とー、酒井さん(C)共同通信社

 高2の5月には、階段で失神し転落、右手首を剥離骨折した。教室でも頻繁に倒れるようになり、頭痛やめまい、耳鳴りなどさまざまな症状が出始め、記憶障害から成績も徐々に落ちていった。

「自分の体はどうなってしまうのだろうか」という不安な気持ちを抑えるため体調が悪くても勉強したが、高3の秋には通学できないほど悪化し、現役での進学は諦めた。

 運動障害に加え、自律神経症状や高次脳機能障害など次々と症状が表れ、診断と治療を求め、25以上の医療機関をまわった。そのころは杖なしでは歩けなくなり、外出には車椅子が必要となっていた。

 発症から3年後には、ワクチンが原因の「免疫介在性脳症」と診断され、15年から鹿児島大学病院で年4回ほど入院し血液浄化療法を受けている。16年、酒井さんは副作用を認めようとしない国と製薬企業2社に対する集団訴訟を提起した。120人の原告は、責任の明確化や医療支援、就学・就労支援などの恒久的な救済と再発防止策を求めている。

 17年5月以降、酒井さんは自力で寝返りもできなくなり、日常生活のすべてに介助を必要としている。昨年には父が急逝し、介護や遠方への通院など、家族の経済的・身体的負担も大きい。現在、大学4年生だ。

「進路変更は余儀なくされたけれども、大学で学んでいる福祉も面白い。社会人になった友人を見ると、自分は将来働けるのだろうか、悔しさや不安が募る。けれどこれから先の人生を諦めるわけにはいかない。製薬会社が情報開示し、一日も早く治療法を確立してほしい。全国にいる被害者が、地元で治療を受けられることを願っています」

 薬害は遠い世界で起きている問題ではなく、自分の生活と隣り合わせにあると訴え続けている。

 (ジャーナリスト・渡辺輝乃)