休職させない精神科医療

診断書で職場環境を改善することも「うつ病」治療の一環

写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 ご本人の御意見が事実であるとすれば、厚生労働省(2012年1月)の定義するパワーハラスメントの定義、すなわち『同じ職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係などの職場内の優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与える又は職場環境を悪化させる行為』に該当する可能性があります。

 事業者におかれましては、労働安全法・安全配慮義務(健康管理義務)の一環として、直ちに現状を調査し、当該職員が安全・健康に職務を遂行できるよう、必要な措置を講じてください」

 通常の職場なら、診断書にこれだけ明確に記せば、変わる。これでも状況が変わらなければ、今度は「○月○日の診断書で危惧を表明しましたが、その後も事態の改善が見られません。至急改善されることを求めます。なおご本人は本件の解決を外部監督機構に委ねる意思はなく、社内で穏便になされることを希望しております」といった、さらに強い調子の診断書を出すことになる。ただ、そこまでいくケースはほとんどないという。もっとも、井原医師によると、診断書に専門家意見を申述することで会社と交渉する医師は、同医師以外にあまりいないという。

(フリージャーナリスト・里中高志)

3 / 3 ページ

関連記事