性感染症最前線

エイズ<1>毎日新たに4人の患者と予備群が見つかっている

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 米国で初めてエイズ(後天性免疫不全症候群)が発見・報告されてから三十数年が経つ。エイズは、原因となるHIV(ヒト免疫不全ウイルス)に感染してから自覚症状のない時期が数年から10年以上続き、放置してさらに進行するとエイズを発症する。

 そのため、1985年から毎年発表されている国内のエイズ発生動向(厚労省)の新規患者数は、エイズ発症前の「HIV感染者」と、すでに発症している「エイズ患者」に分けて報告されている。

 2017年に報告された新規HIV感染者は976人、新規エイズ患者は413人。合わせると1389人で、1日当たり約4人が新たに見つかっている計算だ。

 性感染症専門施設「プライベートケア東京」(新宿区)の尾上泰彦院長が警告する。

「HIVとエイズを合わせた新規報告数は06年以降、年間1500件前後で横ばいですが、うちエイズ患者の割合は30%前後の高止まり傾向が続いています。新規HIVの報告は20~40代に多いのですが、新規エイズの報告は50歳以上では約29%、60歳以降の高年齢層でも10%を超えています。10年以上も前にHIVに感染していて、気づかず生活している人が多いのです」

 HIVは、HIV感染者の血液や精液に含まれているので、感染経路の約9割は性的接触によるもの。最もリスクが高いのは、男性同性愛者(MSM)間の性交だ。17年の新規報告で見ても全体の94.5%(1313人)を男性が占め、HIV感染者の72.6%(709人)、エイズ患者の54.7%(226人)が同性間性的接触によるものとされている。

 HIVが体内に入ると、免疫の仕組みの中心となっているヘルパーTリンパ球(CD4細胞)という白血球などに感染し、体を病気から守っている免疫力を低下させていく。そして、本来なら自分の免疫力で抑えることのできる病気(日和見感染症)を発症するようになる。その代表的な23の指標となる疾患を発症した時点でエイズ発症と診断される。

「国内の発症者で見た指標疾患で最も多いのは、以前はカリニ肺炎と呼ばれていた『ニューモシスティス肺炎』、次いで『カンジダ症(食道、気管、気管支、肺)』で、どちらも真菌症です。そして『サイトメガロウイルス感染症』『HIV消耗性症候群(全身衰弱)』の順で多い。もちろん複数の発症もあります」

 エイズ発症を防ぐにはHIV感染症のうちに治療を開始すること。薬を飲めば95%は発症を抑えられるという。

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