がん治療は情報戦!入院前に知っておきたい「5つの真実」

がんは治る病気になりつつある
がんは治る病気になりつつある

 がんは死ぬ病気のイメージがあるが、種類によっては5年生存率が6割を超え、治る病気になりつつある。とはいえ、それは正しい病院と治療法を選んだ場合。がんに勝つには治療前にどんな情報を押さえておくべきか? 1000件以上のがん手術を手掛け、「『このがん治療でいいのか?』と悩んでいる人のための本」(時事通信出版局)の著者で産業医科大学第1外科の佐藤典宏医師に聞いた。

■近くの病院より遠くの手術数の多い病院

「手術件数が多い病院をハイボリュームセンター、少ない病院をローボリュームセンターと言います。がん手術を受けるときはハイボリュームセンターを選ぶことが鉄則です」

 手術における成功とは手術後の合併症が少なく、手術による死亡リスクなどが低いことを言う。実はハイボリュームセンターの方がローボリュームセンターより手術成功率が高いことが報告されている。例えば、年間20例以上の手術をしている病院で手術を受けた方が膵臓がんの生存率は高くなる。患者特有のさまざまな要素を調整して同じ条件で比べると切除後の生存率は30%も違ってくる。 

「遠くのハイボリュームセンターで膵頭十二指腸切除を受けた膵臓がん患者は、近くのローボリュームセンターで同じ手術を受けた患者に比べて術後早期の死亡率が4・3%少なく、長期死亡リスクが25%も低いとの報告もあります」 

 オランダでは2005年以降、膵臓がん手術をハイボリュームセンターで集中的に行うようにしたところ、それ以前と比べて入院中の死亡率が24%から4%に低下し、2年生存率が38%から49%にアップしたという。 

■執刀医は男性より女性、年齢は40代~50代前半の成功率が高い

 病院で執刀医を紹介されたとき、女性や若い医師だと“大丈夫か”と心配になる人も多いだろう。

 カナダの住民10万4630人を対象にした調査によると、手術後の合併症の発生率ならびに入院日数、再入院率には男性執刀医と女性執刀医には差がなかったものの、30日以内の死亡リスクは女性外科医の患者の方が12%も低かったという。

「原因は不明ですが、女性医師の方がガイドラインに沿った治療をする傾向にあるうえ、コミュニケーション能力が高い。それが影響しているのかもしれません」 

 外科医の年齢と手術成績の関係を調べた研究も多い。有名なのは膵臓、肺、食道、膀胱など8種類のがんの外科手術を受けた患者46万1000人を対象にした米国の大規模研究だ。執刀医を40歳以下、41~50歳、51~60歳、61歳以上に分けて「手術後早期の死亡率」を調べたところ、他のがんでは差はなかったものの、膵臓がんについては41~50歳の外科に比べて61歳以上の執刀による手術の死亡率が高かったという。他の食道がんの手術についての研究では、50代前半の外科医の死亡率が最も低かった。

■金曜手術は月曜より死亡率が50%高い

 がんが見つかればすぐに取り除きたいと思うのが人情だが、手術日を決めるとき「曜日」にも気をつけた方がいいかもしれない。欧米の57の臨床試験の結果では、週末に行った緊急ではない手術は平日に比べて手術後30日以内の死亡率が2倍も高いという報告があるという。 

「スウェーデンの食道がん患者を対象に手術を受けた曜日と5年以内の死亡率との関係を調べた研究では、週の前半(月、火)に比べて後半(水、木、金)の手術の方が5年以内の全死亡率が13%も高かった。子宮体がんも同様の傾向があります。その原因は明らかではありませんが、週末は外科医や外科チームの疲労が蓄積され、正確性や集中力に影響を与えることが原因かもしれません」 

■抗がん剤は副作用が出た方が死亡率が低い

 抗がん剤治療の副作用というと脱毛や吐き気をイメージする人が多いが、代表的なのは感染症などから体を守る白血球の減少だ。白血球には好酸球やリンパ球など多くの種類があるが、とくに目立つのは白血球の50%以上を占める好中球の減少だ。 

「乳がんに対して3種類の抗がん剤注射後の好中球減少と5年生存率を調べた研究では、好中球が減少しなかった患者の65%に対して、軽度な減少は69%、重度な減少で84%でした。つまり、抗がん剤による好中球の減少は“薬が効いている証拠”とも言えるのです」

■がん診断後でも2時間以上の昼寝はダメ

 がんを告知されると落ち込むのは当然だが、活動量が減ると短命になることも知っておいた方がいい。 

「大腸がんサバイバーにおける診断後の生活習慣と死亡率の関係を調べたドイツの研究によると、身体活動が高い群は低い群に比べて死亡率は47%も低下していて、逆に昼間に2時間以上寝ている群はそうでない群に比べて2・22倍も死亡率が高かったそうです」 

 テレビの視聴時間が長い人の死亡率も高かった。がん治療後も日常的に体を動かし、昼寝やテレビを見る時間を極力少なくすることが大切だ。

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