後悔しない認知症

体験した「エピソード記憶」の喪失を食い止める方法はある

写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

■「なるほど」「それで?」と相づちを打つコミュニケーション

 一般的には「エピソード記憶」のほうが忘れにくいとされている。ハワイ旅行を例にとれば、通関のために暗記した英語などの「意味記憶」は意識的に復習しなければ短時間で消えてしまうが、ハワイに旅行したという「エピソード記憶」は努力せずに長期間保たれる。

 同様に受験のためだけに記憶した知識も試験が終われば瞬く間に消えてしまうが、どこの学校を受験したかをすぐに忘れることはない。

 一般的に加齢とともに誰でも記憶は想起しにくくなるのだが、認知症になると、この「エピソード記憶」の想起力の低下が目立つようになる。こうした症状を改善させる可能性は低いものの、症状の進行を遅らせることはできる。

 コミュニケーションの量を増やし、子ども側から意識的に問いかけを行って、親の想起の機会を増やすことだ。同じ話をする親には根気強く耳を傾け、その話に関連したエピソードを聞き出すようにしてみる。「なるほど」「それで?」「初耳だな」などと相づちを打ちながら、これまで出力したことのなかった情報を引き出してあげてみるのである。「親の脳を悩ませる」ことが認知症の進行を抑えるのだ。

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和田秀樹

和田秀樹

1960年大阪生まれ。精神科医。国際医療福祉大学心理学科教授。医師、評論家としてのテレビ出演、著作も多い。最新刊「先生! 親がボケたみたいなんですけど…… 」(祥伝社)が大きな話題となっている。

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