がんと向き合い生きていく

丸山ワクチンは70年以上も「治験」という形で使われている

佐々木常雄氏(C)日刊ゲンダイ

 当時の抗がん剤治療では、胃がんに対して20~30%の効果を認めたのですが、そこに丸山ワクチンを加えても、さらなる上乗せ効果は見られなかったのです。

 その後、日本胃癌学会のガイドラインでは、「非特異的免疫賦活剤と化学療法の併用が胃癌切除後の延命に寄与したという報告があるが、他方では多数の否定的な報告がある。依然、評価は不十分である」と、標準治療として丸山ワクチンの使用を勧めることはありませんでした。

 日本医科大皮膚科の丸山千里医師は、全生園でハンセン病患者にはがんが少ないことに気づき、らい菌は結核菌に近いことから、がんの治療に結核菌を用いることを考えました。

 そして1944年、結核菌から毒性を除いて丸山ワクチンを完成させたのです。実際にがん患者に対して使用したのは、その少し後からのようですが、副作用はなく、これまでたくさんの患者に使われてきました。

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佐々木常雄

佐々木常雄

東京都立駒込病院名誉院長。専門はがん化学療法・腫瘍内科学。1945年、山形県天童市生まれ。弘前大学医学部卒。青森県立中央病院から国立がんセンター(当時)を経て、75年から都立駒込病院化学療法科に勤務。08年から12年まで同院長。がん専門医として、2万人以上に抗がん剤治療を行い、2000人以上の最期をみとってきた。日本癌治療学会名誉会員、日本胃癌学会特別会員、癌と化学療法編集顧問などを務める。

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