医者も知らない医学の新常識

治療の好影響が残る「レガシー効果」を知っていますか?

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

「レガシー(遺産)効果」というのは、ある治療をした良い影響が、その治療をやめても一定期間体に残っている、という現象のことです。たとえばコレステロールの高い患者さんが、薬で5年間以上コレステロールを下げておくと、それから薬をやめてしまっても、動脈硬化の病気の予防効果は、5年以上はそのまま続くというような報告があります。

 それでは、糖尿病にも同じようなレガシー効果があるのでしょうか?この点はまだはっきりと分かっていません。比較的初期の糖尿病の患者さんを対象とした研究では、血糖コントロールを一定期間正常に近づけると、その時にはあまり効果がはっきりしなくても、その影響が後で表れて、動脈硬化が減ったという結果になっています。

 しかし、より病状の進んだ患者さんや高齢の糖尿病の患者さんでは、そうした効果は確認されていません。

 今年の「ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン」という一流の医学誌に載った論文によると、高齢の糖尿病の患者さんに「5年間厳しい血糖コントロールをしても、その効果は通常の治療と変わりはなく、レガシー効果も認められなかった」という結果になっていました。これは認知症など他の病気にも言えることですが、生活改善や生活習慣病の治療効果は、その時ではなく、10年後、20年後に意味を持つものであるようです。

石原藤樹

石原藤樹

信州大学医学部医学会大学院卒。同大学医学部老年内科(内分泌内科)助手を経て、心療内科、小児科研修を経て、1998年より「六号通り診療所」所長を務めた。日本プライマリ・ケア学会会員。日本医師会認定産業医・同認定スポーツ医。糖尿病協会療養指導医。

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