看護師僧侶「死にゆく人の心構えと接し方」

「延命治療拒否」の遺言があると病院の対応が違ってくる

(C)日刊ゲンダイ

 玉置さんは、ご主人の強い希望をかなえてあげたいと。心を鬼にして病院の治療を拒否する。

 問題は親族だった。

「妻が看護師なのに!」と批判が巻き起こり、玉置さんは窮地に立たされてしまう。

「でも、主人の意思を尊重したい。意思を貫き、人生の終末を迎えることもいいのかなと思いました」

 説得の材料として遺言状があったらどうだったろうか。親族や病院に、主人が残していた遺言状を見せ、「本人の意思でしたから」と説明したら、説得にも重みが増したのではという。

「私は看護師です。終末の治療で、延命治療による胃ろうなど、本人が拒否し、その後意識不明になっても、家族の中の1人でも同意したら、病院や家族は治療を継続しなければなりません」

 しかし生前、「延命治療拒否」の遺言があると、病院の対応が大きく違ってくる。渋々ながら、家族も同意するかも知れない。

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玉置妙憂

玉置妙憂

東京都生まれ、53歳。専修大学法学部卒業後、法律事務所に勤務。長男の重い病気が動機になり30歳の時、看護師資格を取得。46歳の時に、がん闘病の主人を自宅でみとった後、高野山真言宗に得度した。臨床宗教師としても講演、執筆活動を行っている。「大慈学苑」主宰。

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