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口から食べ物が飛び出たら…加齢による“フレイル”を疑う

若い頃のようにはいきません(写真はイメージ)
若い頃のようにはいきません(写真はイメージ)/(C)日刊ゲンダイ

 若い頃はそうではなかったのに、ある年代を超えたあたりから、口の中のものが飛び出たり、周りに食べ物がついたりするようになった……。実はこうした変化は「フレイル」の兆候です。

 フレイルとは、一見健康を維持できているように見えるものの、加齢によって筋力が衰え、肉体的には虚弱状態にあること。健常から要介護へ移行する中間の段階といわれています。このフレイルの兆候を早期発見できる体の部位のひとつが、口なのです。

 食べ物を食べることを「摂食」、食べ物をよく噛み砕き味わうことを「咀嚼」、飲み込むことを「嚥下」といいます。これらは全て脳からの指令で行われますが、実際には筋肉の力で行われる。咀嚼や嚥下が困難になることを「摂食嚥下障害」と呼びます。

 摂食嚥下障害の原因は、器質的(器官の構造そのものに問題がある)、機能的、心理的の3つに大別されます。このうち、加齢によって口腔の筋力が衰えるのは、機能的原因。唇を閉じる力が弱くなるため、食べ物が口から出たり、よだれが出たりするようになります。また、食べ物をよくこぼす、うまく噛めない、食事をすると鼻水が出る、むせるなどもよくある症状です。

 今後、筋力の低下がもっとひどくなると、飲み込む時に気道を閉じることができなくなって、食べ物が気管に入り込む「誤嚥」のリスクが高まります。すると、誤嚥性肺炎を起こすリスクも高まります。もし、食事中によくむせるようになったら要注意。かかりつけ医らに相談した方がいいかもしれません。

 口の周りに食べ物がついていても気づかないのは、筋力だけでなく、加齢によって触覚が低減することも原因。

 いずれにしろ、このような生理特性の変化は誰にでもおとずれるもの。早食いせず、一口量は少なめに、よく噛んで飲み込むようにしましょう。

(国際医療福祉大学熱海病院検査部・〆谷直人部長)

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