看護師僧侶「死にゆく人の心構えと接し方」

「主人は今日、何を食べてくれるのかしら」

玉置妙憂さん(C)日刊ゲンダイ

「コップを満たす」とは、一言で説明すると、家族、特に両親や主人(あるいは妻)の介護者に向けた、いたわりのアドバイスである。

 高齢化社会が急速に進み、内閣府の発表では要介護認定者は633万人(2017年)。介護者は、ベストを尽くすのが当たり前だが、頑張り続けると、介護する本人が心身の病に倒れかねない。

 徘徊の監視や1日3度の食事介護。寝かせても、一人で寝返りが打てない。毎晩のように続く深夜の排泄処理……。

 それが1カ月、半年ならまだしも、1年あるいはその先何年続くか分からない。

 玉置さんは、ご主人を数年間介護していた夫人からの相談で、「あなたも少し休んでいいのよ、と助言をいたしました。ご主人を家において歌舞伎観劇に行ったところ、近所の噂になったそうです。でも、私はそれが正解ですとも言いました。ゆとりを持ちなさい。自分のコップを幸せの水で満たし、いっぱいになった幸せを、誰かに分け与えたらいいのです」。

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玉置妙憂

玉置妙憂

東京都生まれ、53歳。専修大学法学部卒業後、法律事務所に勤務。長男の重い病気が動機になり30歳の時、看護師資格を取得。46歳の時に、がん闘病の主人を自宅でみとった後、高野山真言宗に得度した。臨床宗教師としても講演、執筆活動を行っている。「大慈学苑」主宰。

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