上皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」

「スーパーナース」の育成が若手医師のレベルも引き上げる

順天堂大学医学部心臓血管外科の天野篤教授(C)日刊ゲンダイ

 医療では、患者さんを守る医療安全が診療に優先され、これをチームで共有する意識が大切です。そのような中で、最近はスーパードクターならぬ「スーパーナース」を育てていくことが重要なのではないかと考えています。

 日本では2004年から新しい臨床研修制度が実施され、診療リスクが高く、比較的忙しい専門科を選択する若手医師が減ってきました。また、18年には新専門医制度が始まり、まるで促成栽培のように若葉マーク止まりの専門医がつくられる時代になっています。「こんな医者になりたい」という情熱が顔に表れない“のっぺらぼう”のような医師が増えているのが現状です。

 こうした若手医師のレベルを引き上げるためにも、スーパーナースの育成は重要です。昔から、「医者がダメな病院は看護師もダメ。医者が賢くてヤル気のある病院は看護師のレベルも高い」と現場でよく言っています。いまはやる気があってガンガン突き進んでいく医師が育つ環境がなくなってきているので、まずは看護師を徹底的に鍛えてレベルを上げ、「看護師のレベルが高い病院は医師のレベルも高い」という方向に進めることができないだろうかと考えているのです。

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天野篤

天野篤

1955年、埼玉県蓮田市生まれ。日本大学医学部卒業後、亀田総合病院(千葉県鴨川市)や新東京病院(千葉県松戸市)などで数多くの手術症例を重ね、02年に現職に就任。これまでに執刀した手術は6500例を超え、98%以上の成功率を収めている。12年2月、東京大学と順天堂大の合同チームで天皇陛下の冠動脈バイパス手術を執刀した。近著に「天職」(プレジデント社)、「100年を生きる 心臓との付き合い方」(講談社ビーシー)、「若さは心臓から築く 新型コロナ時代の100年人生の迎え方」(講談社ビーシー)がある。

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