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胃カメラ異常なし更年期でもない 女性の不調の意外な原因

梅雨から夏にかけては体調を崩しやすい
梅雨から夏にかけては体調を崩しやすい(C)共同通信社

 梅雨入りした東京は、ハッキリしない天気が続きます。それでも、あと1カ月もすれば暑い夏です。昨年のような猛暑はうんざりで、夏バテで体調を崩した方が、とても多くいらしたことを思い出します。

 あれほどの猛暑でなくても、梅雨から夏にかけては、体調を崩しやすいでしょう。酷暑の気温やジメジメとした湿度が、体にはストレスで、ひいては睡眠不足や運動不足を招き、食欲不振を引き起こします。

 夏バテによる食欲不振はクーラーをうまく活用し、涼しい環境をつくれば改善しますが、病気による食欲不振を夏バテが原因と軽く考えて、見過ごされると大変です。中高年だと、加齢で少しずつ食が細くなります。そんな方だと、“夏バテの誤解”を生じやすいだけに要注意でしょう。

 食欲不振を起こす病気は、胃炎や胃潰瘍などのほか、がんなど、たくさんあります。ほかの症状との重なりや違いをチェックすることが大切でしょう。まずは、胃炎や胃潰瘍など消化器系の病気の場合です。

 食欲不振の前に、胃もたれ、胃痛、胸焼け、腹部膨満感、ゲップなどが慢性的に続きます。胃炎は8割がピロリ菌が原因ですが、NSAIDsという鎮痛薬の副作用で生じることも。

 たとえば、慢性的に頭痛がある人が、鎮痛薬の飲み過ぎで胃炎を起こすケースです。

 これらが疑われるときは、胃カメラで胃の状態をチェックしたり、ピロリ菌の有無を調べたりします。

 食欲不振に加えて、疲労感や無力感などが強まるのが甲状腺の異常です。その機能低下で、“活力ホルモン”というべき甲状腺ホルモンの分泌が低下すると、そんな症状が表れます。

 さらに、皮膚が乾燥することも。甲状腺の異常は女性に多く、前記の検査で胃の異常が否定されると、血液検査で甲状腺の機能を調べて、診断します。

 更年期障害の症状の表れ方によっては、食欲不振や疲労感が更年期症状と誤解されやすく、甲状腺の異常が見落とされることも。パートナーの不調は、男性にとっても要注意でしょう。

 先ほどがんと書きましたが、がんで食欲不振が表れるのは、進行がんになってから。胃がんや大腸がんなどの初期は、自覚症状がほとんどありません。

 がんが大きくなると、食べ物が通過しにくくなりますから、胃もたれによる食欲不振、腹部膨満感による食欲不振などが気になるのです。

 しかし、それらの症状はがん特有のものではないので、がんの早期発見には役立ちません。早期発見を目指すなら、1年に1回の胃カメラ検査と便潜血検査が効果的といえます。胃がんや大腸がんは早期に発見できれば根治できる可能性が高いですから。

(梅田悦生・赤坂山王クリニック院長)

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