看護師僧侶「死にゆく人の心構えと接し方」

介護のイライラ感を解消する「瞑想」の正しいやり方

玉置妙憂さん
玉置妙憂さん(提供写真)

 介護認定は身の回りの世話という要支援1から、寝たきり状態の要介護5までの7段階に分けられる。いずれのランクでも、家族の介護努力は、心身とも半端ではない。

 とりわけ徘徊や排泄の世話が加わると、介護人のイライラ、ムカムカ感も頂点に達してしまう。

 警察庁の発表によると、介護、看病疲れが原因で2007~15年の間に、介護人による400件に近い殺人が起こっている。

「私自身も経験がありますが、介護することは実に大変なこと。一例では排泄で下半身を汚したために奇麗に洗い、新しい下着に取り換えてあげて寝かせると、もう5分もしないうちに、また下着を汚しています」

 こう語るのは看護師歴20年余りで、僧侶でもある玉置妙憂さんである。

 介護によって募るイライラ、ムカムカ感。何か解決策はあるのだろうか。玉置さんが言う。

「人間のイライラ、ムカムカ感は、脳内で『思考のチェーン』と呼ばれる負の連鎖が起こること。その思考チェーンをすっぱりと絶つには、まず本人が、そのイライラに気づくことですね。そうした負の感情に流されないためにも、私は『瞑想』を勧めています」

 瞑想といっても、寺院などを訪ね、かしこまって正座することはない。声をかけられない環境なら、場所を選ぶことなく、床か椅子に座るか、布団に寝転んでもいいのだそうだ。

 やり方は基本として、

①気持ちを楽にする。

②体の中心線がストンと真っすぐに地球の中心まで通っているイメージにする。

③静かに鼻から息を吸う。お腹の丹田(おへその5センチ下)から、息がパッと入ってくる様子を思い描く。

④息を吸った約3倍の長さで、静かに息を吐く。

⑤これを5~10回繰り返す。耳から入る音は、肩から入ってくるようにイメージする。

⑥心の中でザワザワしているものが“沈殿”してくると連想する。

⑦沈殿してきたと感じたら、呼吸を意識することなく、普段通りの呼吸に戻る。

⑧この段階から本格的な「瞑想」の時間に入る。

 問題は瞑想中、頭に浮かぶ雑念である。仕事や家族のこと。でも浮かんだ雑念は、追いかけることなく流してしまう。

 続いて他の雑念が起こっても再び流すというこの繰り返しの訓練で、瞑想に入ることができるという。

「瞑想のポイントは、目は半眼にして、リラックスですね。サラリーマンの方なら通勤電車の中でも『瞑想』は可能ですよ」

玉置妙憂

玉置妙憂

東京都生まれ、53歳。専修大学法学部卒業後、法律事務所に勤務。長男の重い病気が動機になり30歳の時、看護師資格を取得。46歳の時に、がん闘病の主人を自宅でみとった後、高野山真言宗に得度した。臨床宗教師としても講演、執筆活動を行っている。「大慈学苑」主宰。

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