だからといって、このアミロイドβタンパクを体内から排除すればいいかといえば、ことはそう簡単ではない。排除する方法は見つかっていないし、排除することによる副作用の可能性も否定できない。残念なことに現段階では、この物質のメカニズムはいまのところ解明されておらず、正常な人体においては何らかの役割を担っているのではないかとも考えられている。だが、このアミロイドβタンパクが脳内に蓄積しはじめるとすぐに認知症を発症するかといえば、答えは「NO」である。蓄積から約20年程度を経過してから発症するとされている。現在40代、50代の世代ではすでにアミロイドβタンパクの脳内の蓄積がはじまっている可能性が高いともいえる。
このようにアルツハイマー型認知症発症にアミロイドβタンパクが深く関わっていることは間違いのないことなのだが、いまのところ、これを脳内から取り除いたり、その生成を止めたりする治療薬の開発、あるいは治療法は確立されていない。認知症の治療薬としてはアリセプト、メマリーなどがあるが、これらはアミロイドβタンパクの蓄積を改善する薬ではなく、アルツハイマー病においてはアセチルコリンという神経伝達物質が減少するため、それを補うための薬なのである。
後悔しない認知症