後悔しない認知症

「ウチはボケない家系だから大丈夫」に科学的根拠はない

写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 脳におけるアミロイドβタンパクの蓄積の予防策も、私にはよくわからない。ただ、脳の環境が良い人のほうがなりにくいように思われる。たとえば、うつ病で治療を受けないと神経伝達物質の不足が長年続くせいか、年をとってから認知症になりやすいことが知られている。アルコールの大量摂取もそうだ。低血糖による脳のダメージも大きいようで、栄養状態が悪い人は認知症になりやすい。

 糖尿病が認知症のリスクファクターという説が強まっているが、私が浴風会病院にいる際に、解剖までして調べたデータでは、糖尿病のない人のほうが3倍くらい認知症になりやすかった。その頃は、血糖値が高いほうが脳にいいと考えられ、浴風会では糖尿病の治療をしなかった。今は糖尿病の治療をするので、認知症と糖尿病の関係については、治療による低血糖の影響の可能性を私は疑っている。経験的に言うと、私は高齢になってからの過度の節制によるストレスのほうが脳に悪いと信じている。

 いずれにせよ、「家系的に大丈夫」は論外で、脳にいい生活を心がけたいものである。

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和田秀樹

和田秀樹

1960年大阪生まれ。精神科医。国際医療福祉大学心理学科教授。医師、評論家としてのテレビ出演、著作も多い。最新刊「先生! 親がボケたみたいなんですけど…… 」(祥伝社)が大きな話題となっている。

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