看護師僧侶「死にゆく人の心構えと接し方」

体に余計なことをしない方が奇麗に旅立てることを教わった

玉置妙憂さん
玉置妙憂さん(C)日刊ゲンダイ

「長く持って、余命はあと3年ぐらいでしょうか」

 末期がんの患者が医師に、こう告知される。がんに限らず大手術になると、つい死の不安に襲われてしまう。

 毎晩、枕を濡らしながら、術後の延命治療に期待することになる。

「自分の人生を美しく仕上げるには、もう一歩前に進んでほしいと思います。延命治療を頭から否定はしません。でも例えば、人工呼吸器を使いますと、声が出せなくなります。もし臨終の最期まで自分の声を出し続けたいと望むなら、拒否する治療も選択のひとつではないでしょうか」

 長年、外科の看護師を務めながら僧侶の道も選んだ玉置妙憂さんはこう語る。

 玉置さんは、看護師の業務を主に在宅ケアに移し、早晩、死を迎えようとしている多くの人々に寄り添い、またはみとってきた。

 そうした臨終と背中合わせにある人に5つの望ましい死にざまについて話をするという。

①体中に一本のチューブもつけずに最期まで過ごしたい

②食べ物は口から食べたい

③枯れるように旅立ちたい

④みんなに見守られながら逝きたい

⑤一日の時間配分は、自分で決めたい

 つまり、「終の棲家を病院や老人ホームではなく、家族が住む自宅にして、要するに『胃ろう』など延命治療を遠ざけてしまうという選択もありますよ」と、教える。

 そうした意思を強く持った人は、医療機関とのトラブルを避けるためにも、文にして書き残しておくことと、付け加えている。

「屁理屈かも知れませんが、風邪薬や鎮痛剤を飲むことだって延命治療の処方です。目的は少しでも命を延ばすことでしょう? 延命治療への強い執着を持つこともいいのですが、それよりも、自分が最期までやりたいことは何かを考えてほしいのです」

 こう語る玉置さんの主人は、再発がんの延命治療を拒否し、自宅で好きな仕事を選択(カメラマンとして作品整理)。自宅で自分の人生に終止符を打った。

 玉置さんは、亡くなったご主人から体にとって余計なことをしないほうが、奇麗に旅立てることを教わったという。

「人は苦しむために生まれてきたのではありません。楽しむために生まれてきました。泣きたかったら泣けばいいのです。いくら泣いても涙など枯れませんからね。ただ悲しみで明け暮れているよりも、自分はどんな人生で終わらせたいかを考えてほしいと思います」

玉置妙憂

玉置妙憂

東京都生まれ、53歳。専修大学法学部卒業後、法律事務所に勤務。長男の重い病気が動機になり30歳の時、看護師資格を取得。46歳の時に、がん闘病の主人を自宅でみとった後、高野山真言宗に得度した。臨床宗教師としても講演、執筆活動を行っている。「大慈学苑」主宰。

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