独白 愉快な“病人”たち

食べて吐いての繰り返し…秋本啓之さん語る過食嘔吐との闘い

秋本啓之さん(C)日刊ゲンダイ

■階級を1つ上げたことが完治のきっかけ

 そうやって減量しても、初めのうちは体調が良く結果も出ていたのですが、だんだん試合で自分の力が発揮できなくなっていきました。そして2006年、ドーハで行われたアジア大会で、スタミナ自慢のボクがスタミナ切れで負けてしまったのです。そうなって初めて、当時全日本のコーチで、大学柔道部の監督でもある岡田弘隆先生に過食嘔吐の症状があることを打ち明けました。

 後日、大学内の診療所でカウンセリングを受けて「過食嘔吐による摂食障害」と診断され、その後は数カ月間、その岡田先生の家で下宿生活を送りました。朝晩、先生の奥さんが作る健康的な手料理を食べ、学校や練習場に通う日々。それでだんだん過食嘔吐の頻度は減っていったものの、自宅に帰るとやっぱりダメで、2~3年は治りませんでした。

 完全に治ったきっかけは、階級を1つ上げたことです。それを決断できたのは2008年の全日本の欧州遠征でした。3連戦の2戦目で、筋肉の収縮が起きたのです。まるで電気刺激で筋肉を鍛えるパッドを付けたように腕や腹筋が勝手にぴくぴくと収縮運動をするんです。そんなこと初めてだったのでびっくりしました。そして次の試合ではお尻の肉離れ……それが決定打でしたね。

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