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国内の専門誌で報告 妊娠前の発酵食品は早産を予防する?

妊娠34週未満では早産リスクが低下する
妊娠34週未満では早産リスクが低下する

 通常の出産時期(妊娠37週~41週6日)よりも早い時期(妊娠22週~36週6日)に出産してしまうことを「早産」と呼びます。早くに生まれた赤ちゃんほど、健康状態に何らかの障害が発生する確率が高くなるため、妊娠中は定期的な検診を受けることが大切です。

 ところで、納豆やヨーグルトのような微生物による発酵食品は、腸内細菌バランスを改善することで、健康状態に良い影響をもたらすと考えられています。妊娠前の発酵食品摂取と早産リスクの関連を検討した研究論文が、日本衛生学会誌2019年5月号に掲載されました。

 この研究では、環境省が実施している「子どもの健康と環境に関する全国調査」のデータを用いて、早産のリスクが低いと考えられた7万7667人の妊娠女性が対象となりました。結果に影響を与えうる、年齢や体格指数(BMI)、喫煙状況などの因子について、統計的に補正をして解析しています。

 その結果、妊娠34週未満の早期早産リスクは、味噌汁の摂取が週に1日未満の人に比べて、週に5日以上の人で38%、ヨーグルトの摂取が週に1回未満の人に比べて、週に5回以上の人で38%、納豆の摂取が週に1回未満の人に比べて、週に3回以上の人で40%、統計学的にも有意に低下することが示されました。なお、チーズの摂取ではリスクの低下傾向が示されたにとどまり、有意な差は認めませんでした。また妊娠34~36週の後期早産のリスクについての解析では、発酵食品摂取との明確な関連性を認めませんでした。

 もちろん、本研究結果のみから発酵食品が早期早産を予防するとは結論できませんが、日ごろからバランスの良い食習慣が大切だといえるかもしれません。

青島周一

青島周一

2004年城西大学薬学部卒。保険薬局勤務を経て12年9月より中野病院(栃木県栃木市)に勤務。“薬剤師によるEBM(科学的エビデンスに基づく医療)スタイル診療支援”の確立を目指し、その実践記録を自身のブログ「薬剤師の地域医療日誌」などに書き留めている。

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