急増中 「大腸がん」宣告後も長生きするための5つのヒント

ビタミンDは太陽光に当たるだけで体内に合成できる
ビタミンDは太陽光に当たるだけで体内に合成できる

 大腸がんが急増している。2016年のがん登録データでは罹患数はトップ、死亡数も肺がんに次いで第2位。不幸にして、大腸がんと宣告されて以降、どんな生活を送ればいいのか? そのヒントを1000件以上のがん手術を手掛ける産業医科大学第1外科の佐藤典宏医師に聞いた。

■週2.5時間のウオーキング

「大腸がんの生存者における4つの大規模なコホート研究によると、大腸がんと診断された後に活発に運動をすると、がんの再発、大腸がんによる死亡、全体の死亡率が各50%も低下することが明らかになっています」

 なぜ、運動が大腸がん治療に役立つのか? 治療に耐える体力がつくこともあるが、注目されているのが「運動による免疫システムの変化」だ。

「運動すると骨格筋からマイオカインと呼ばれる生理活性物質がわかっているだけで300種類以上分泌され、全身に巡ることが知られています。糖尿病や肥満など生活習慣病の予防や治療に役立つとされています。そのなかには抗がん作用や免疫力強化に関係しているものがあるのです」

 例えば、運動するとマイオカインであるインターロイキン6が分泌され、血液中のがんの免疫監視システムで重要な役割を果たしているナチュラルキラー細胞(NK細胞)を活性化する。他にも、NK細胞やTリンパ球の腫瘍内への浸潤数を増加させたりすることが報告されている。

 では、どの程度の運動をすればいいのか?

「大腸がん患者2293例を対象にした研究では、必要なウオーキング量の目安は1週間2.5時間とはじき出しています」

■魚を食べる

「がんの食事療法については一定の見解が得られておらず、“関係ない”と言う医師もいます。私は“食事療法だけでがんが治る”という極論は別にして食事は大切だと考えています。なかでも注目しているのが魚です」

 大腸がん診断後に海洋性オメガ3脂肪酸を多く摂取することで、がん再発率、がん死亡率及び全死亡率が低下すると複数報告されている。

 例えば、1659人の大腸がん患者を対象とした前向き研究では、海洋性オメガ3脂肪酸を1日0.1グラム未満しかとらない患者に比べて1日0.3グラム以上摂取する患者の方が、約40%も大腸がんによる死亡リスクを低下したという。さらに、診断後にその摂取量を少なくとも1日0.15グラム以上増やした患者では、そうでない患者に比べて約70%も大腸がんによる死亡リスクが低下したとの報告もある。海洋性オメガ3脂肪酸はマグロ、イワシ、サンマ、サバ、カツオといった魚に多く含まれている。

■ビタミンDを取る

 骨を強くする作用が有名だが、多くの遺伝子を調節することでがんの治療効果を持つことがわかっている。がん細胞の増殖を抑制し、分化やアポトーシス(自死)を誘導し、がんが栄養を取るために必要とする血管新生を阻害し、炎症を抑えるなどの働きが報告されている。

「ビタミンDは、がんに対する免疫の働きを活性化する機能があることがわかっていて、大腸がんの診断前ならびに診断後の血中ビタミンD濃度が高い人は、低い人に比べて生存率が高くなることが知られています」

 ビタミンDはキノコなどに豊富だが、太陽光に当たるだけで体内で合成できる。

■食物繊維を多く

 大腸がん患者の食事と死亡リスクの関係を調べた研究結果から、診断後に食物繊維をより多く取ることで生存期間が長くなることがわかっている。

 1575人の大腸がん患者を対象とした研究によると、1日の食物繊維摂取量が5グラム増加するにつれて大腸がんによる死亡率が22%低下し、全死亡率も14%低下したという。

 また、がんと診断される前まではあまり食物繊維を取っていなかった人でも、診断後に多く取ることで、死亡率が低下することも示唆されている。食物繊維が多い食品は、玄米、麦ごはん、サツマイモ、コンニャク、大豆、煮豆、ゴボウ、レンコン、パセリ、キノコ類などだ。

■コーヒーを4杯

 コーヒーの健康効果はたくさんあるが、大腸がんの再発率を低下して、生存期間が延びることも明らかになっている。

 ステージ1~3の大腸がん患者1599人を対象とした米国での研究では、1日4杯以上コーヒーを飲む人はまったく飲まない人に比べて、大腸がんによる死亡リスクが52%低下し、すべての原因による死亡リスクが30%低下したという。

「大腸がんは、他のがんと比べても運動や食生活といった生活習慣との関わりが深いとされ、がんに対する免疫力を高め、患者の生存期間を改善するための生活習慣についての研究が盛んです。もちろん全員に当てはまるわけではありませんが、告知後の生活のヒントになるはず。担当医と相談して試すのもいいでしょう」

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