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【野沢菜漬け】植物性乳酸菌とビタミンB1で整腸と疲労回復

野沢菜漬けと豚肉の炒め物。奥は左から、冷ややっこ たたきオクラと一緒にのせて。アジの刺し身は特性醤油で。
野沢菜漬けと豚肉の炒め物。奥は左から、冷ややっこ たたきオクラと一緒にのせて。アジの刺し身は特性醤油で。(C)日刊ゲンダイ
発酵食品<3>

 食品の発酵に役立つ乳酸菌のうち、牛乳をヨーグルトやチーズに変えるのが動物性なら、野菜を漬物に変えるのは植物性です。

 栄養豊富な乳糖をエサに、恵まれた環境のもとで育つ動物性乳酸菌に比べて、植物性乳酸菌は過酷な環境下で、豊富とはいえない野菜の糖を食べて育ちます。

 そのため丈夫で、生きた状態のまま腸に届く可能性が髙い。野菜自体に食物繊維が豊富ですから、整腸作用が期待できます。

 野菜を漬物にすると水分が抜けてカサが減るだけに、量がたくさん取れるのも利点です。

 今回は漬物を単なる漬物としてではなく、野菜や調味料としていただくことにしました。野沢菜漬けはなるべくなら無添加のものを選び、野沢菜漬け自体に塩分が含まれているので調理する際の塩気は控えめにします。しばらく冷蔵庫で保存しておけば発酵が進み、酸味が増します。

 野沢菜漬けと炒める豚肉には疲労回復効果のあるビタミンB1が食品の中でも群を抜いて多く含まれているうえ、動脈硬化や認知症の発症にブレーキをかけるビタミンB6やビタミンB12も豊富です。

■豚肉との炒め物

《材料》 
◎野沢菜漬け 1カップ(水気を絞って3センチに切りそろえる)
◎豚バラ肉 200グラムを一口大に
◎酒 大さじ2
◎醤油 大さじ1
◎片栗粉 小さじ1
◎白胡椒 適量
◎長ねぎ 2分の1本分を縦半分に切り、芯を除いて斜め薄切り
◎ごま油 大さじ1

《作り方》 
 豚バラ肉と酒、醤油、片栗粉、白胡椒を合わせて軽く揉み込んで、10分おく。フライパンにごま油を中火で熱して豚バラ肉を入れ、色が変わるまで炒める。野沢菜漬けと長ねぎを加えて強火でさっと炒め、最後に白胡椒で調味する。

■冷ややっこ たたきオクラと一緒にのせて

 好みの豆腐をペーパータオルで包み水を切る。がくの周りをむいて、板ずり(塩をまぶしてすり込み、まな板の上で転がす下ごしらえ)したオクラをみじん切りに。みじん切りにした野沢菜漬けと合わせて豆腐にのせる。好みでごま油を少量かけてもよい。

■アジの刺し身を特製醤油で

 野沢菜漬けを細かいみじん切りにして、水分を絞らず醤油と合わせる。これにレモン汁を少量加えた野沢菜漬け醤油を、アジの刺し身にのせていただく。この特製醤油は白身の刺し身や茹で豚、蒸し鶏、トマトにも合う。

▽松田美智子(まつだ・みちこ) 女子美術大学非常勤講師、日本雑穀協会理事。ホルトハウス房子に師事。総菜からもてなし料理まで、和洋中のジャンルを超えて、幅広く提案する。自身でもテーブルウエア「自在道具」シリーズをプロデュース。著書に「季節の仕事 」「調味料の効能と料理法」など。

野沢菜漬け
野沢菜漬け
長寿を生む乳酸菌、食物繊維、ビタミンA、C、控えめな塩分

 マヨネーズの賞味期限をご存じですか。常温でも、プラスチックチューブ入りなら10カ月程度、ガラス瓶入りなら1年程度。生卵を主要な原料としているのになぜこんなに長持ちするのか。普通の生卵だったら確実に数日以内に腐ってしまう。その秘密はマヨネーズは酸性(すっぱい)だからである。酸性環境では普通の雑菌は生育することができない。だから長持ちする。

 しかし、酸性でも生育できるよい菌がいる。それが乳酸菌だ。野菜をお漬物に変えてくれるのが乳酸菌。そして消化管内で腸内環境を整えてくれるのも乳酸菌である。牛乳をヨーグルトに変えてくれるのも乳酸菌(ちなみにマヨネーズは酢と油を混ぜてつくる加工食品で乳酸菌発酵ではない)。

 長野県は長寿日本一(2015年のデータでは女性が1位、男性は2位)。その秘密は野沢菜にありとの説がある。長野県人は三度のご飯の時だけでなく、おやつにもお茶と野沢菜をいただく。乳酸菌と食物繊維、そして本来、野沢菜に含まれるビタミンAやCのおかげということ。漬物としての野沢菜は塩分控えめで爽やかな味。この点も優れた健康食といえる。

▽福岡伸一(ふくおか・しんいち) 1956年東京生まれ。京大卒。米ハーバード大医学部博士研究員、京大助教授などを経て青学大教授・米ロックフェラー大客員教授。「動的平衡」「芸術と科学のあいだ」「フェルメール 光の王国 」をはじめ著書多数。80万部を超えるベストセラーとなった「生物と無生物のあいだ」は、朝日新聞が識者に実施したアンケート「平成の30冊」にも選ばれた。

※この料理を「お店で出したい」という方は(froufushi@nk-gendai.co.jp)までご連絡ください。

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