進化する糖尿病治療法

基準値を超えずにギリギリセーフが長年続くと危険なワケ

生活習慣改善が大事

 ご飯や肉類などの前に野菜を食べる「ベジファースト」を習慣化したり、運動までいかなくても少し歩くなど体を動かすことを心掛けたり、睡眠を十分に取ったり、飲酒量を見直すだけで、血糖値は元に戻る可能性が高いのです。

 では、先に挙げた「糖尿病でない」状態にギリギリとどまっている期間が長い人は、何をしたらいいのか?

 血糖値を下げる薬を飲む? いえ、糖尿病とまだ診断されていない以上、薬物治療の対象にはなりません。糖尿病でない、でも「糖尿病でないから安心」とは決して言えないこの段階でできることは、生活習慣改善しかありません。

「1~2年で血糖値が上がった人と対策は同じじゃないか」と思う人もいるかもしれません。確かに対策は同じですが、より熱心に生活習慣改善を行わないと、良い結果は得られないでしょう。また、「ギリギリ状態を長年」の人は、血圧やコレステロールなどほかの数値についても高めであるケースが珍しくない。ほかの数値の改善のためにも、熱心な生活習慣改善が必要とされます。

 具体的な目標として、「食事は腹八分目」「野菜を取る」「日常的な運動」「体重5~10%減」「禁煙」「ストレス対策」「定期的な健診」を。どれでもできるもの、続けられやすいものから実践しましょう。

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坂本昌也

坂本昌也

専門は糖尿病治療と心血管内分泌学。1970年、東京都港区生まれ。東京慈恵会医科大学卒。東京大学、千葉大学で心臓の研究を経て、現在では糖尿病患者の予防医学の観点から臨床・基礎研究を続けている。日本糖尿病学会、日本高血圧学会、日本内分泌学会の専門医・指導医・評議員を務める。

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