がんと向き合い生きていく

難治性の造血器腫瘍を克服した患者さんが訪ねてきてくれた

佐々木常雄氏(C)日刊ゲンダイ

 患者さんがこうした状態に耐え、ドナーの骨髄が生着すると回復してくるのです。

 Aさんが移植を受けて1カ月が経過したころ、そろそろ回復してくるはずなのに白血球数ゼロが続きました。頻回の輸血で血小板抗体ができて、タイプの合った血小板輸血でないと効果が得られない状態でした。また、口内炎がひどくて食事も取れず、発熱も続いていました。一日一日が地獄のような大変な日々でした。熱が下がっても、すぐにまた高熱が出ます。

■人は希望があるから生きてゆける

 当時の私は、以前に骨髄移植を行った17歳の女子高校生の日記を思い出しました。

「人は希望があるから生きてゆける。私には希望は残っている。ただ、たどりつくのが、あまりにもつらく、けわしく、果てしなく、そして残酷なのだ。しかも確実にたどりつけるのかどうかもまったくわからない。そんなものが希望なのか。でも私はそれに必死にしがみつくしかないような気がする」

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佐々木常雄

佐々木常雄

東京都立駒込病院名誉院長。専門はがん化学療法・腫瘍内科学。1945年、山形県天童市生まれ。弘前大学医学部卒。青森県立中央病院から国立がんセンター(当時)を経て、75年から都立駒込病院化学療法科に勤務。08年から12年まで同院長。がん専門医として、2万人以上に抗がん剤治療を行い、2000人以上の最期をみとってきた。日本癌治療学会名誉会員、日本胃癌学会特別会員、癌と化学療法編集顧問などを務める。

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