虫刺され徹底対策 「虫よけスプレー」の正しい使い方とは

2014年のデング熱騒動を忘れてはいけない
2014年のデング熱騒動を忘れてはいけない(C)日刊ゲンダイ

 44歳の記者の足首が、虫に刺されて“サリーちゃんの足首”のようになったのは、先月のこと。川べりでバーベキューを楽しんだ。足元こそサンダルだったものの、足首まで隠れるロングスカートをはいていた。ところが……。夕方くらいから両足首のかゆみがひどくなり、翌朝には腫れて、両足首ともにくびれがなくなった。その夜には、水膨れができ、翌々日にはさらに大きくなった。仕事に集中できないほどかゆみがひどい。会社近くの皮膚科に飛び込んだところ、「蜂窩織炎(何らかの原因で皮膚のバリアーが破れ、細菌に感染して炎症を起こす病気)」と言われた。抗生物質、抗ヒスタミン薬、ステロイドの塗り薬で腫れは治まったが、1カ月経った今も痕はバッチリ残っており、まだかゆい。

「自然が多いところや海外に出掛ける時は、虫刺されの対策を十分に講じるべきです」

 こう話すのは「世田谷そのだ皮膚科」の園田広弥院長。

 虫刺されで悩んだことがない人も対策を忘れてはいけない。2014年、70年ぶりに国内でデング熱の感染が確認されたのを覚えているだろうか。都内の公園で蚊に刺されて感染したとみられているが、虫刺されそのものは問題なくても、虫を媒介とする病気に感染するリスクがある。今、西日本を中心に猛威を振るっているウイルス感染症SFTS(重症熱性血小板減少症候群)も、マダニが媒介する。

■「濃度が高い=効果が高い」は間違い

 絶対にやるべきは、虫に刺されない対策。肌の露出を極力控えるだけでは不十分。長ズボンと靴下の間のわずかな隙間を刺されることもあるし、ズボンの下から入ってくることもある。

「薄い衣類はその上から刺される可能性も。100%防止は無理。虫よけスプレーを使用すべき」(園田院長=以下同)

 虫よけスプレーは市販品のみ。日本で売られているのは、ディートとイカリジンという2つの成分のもので、ディートは最も高濃度のもので30%、イカリジンは15%。

「濃度は持続時間に関係していて、効果の高さとは関係ありません。高濃度のものでも、汗をかいたり衣服で擦れたりすると、商品の説明書に書かれている持続時間が期待できないこともあります。頻繁にスプレーをした方がいいでしょう」

 イカリジンは子どもOKだが、ディートは濃度で制限がある。30%は12歳以上が使え、12%は6カ月以上2歳未満は1日1回、2歳以上12歳未満は1日3回。ディートとイカリジンでは守備範囲の虫も異なる。

 また、ディート12%は、小児の場合、顔への使用は禁止。成人が顔に使う時は、手のひらに取って、目や唇の周りをよけて塗る。

「オーガニックの虫よけスプレーもありますが、ディートやイカリジンに比べると、効果が落ちるかもしれません」

 虫に刺されたら、どうするか? 症状が大したことがなければ市販の塗り薬でいいが、1日経ってもかゆみがひどい、腫れている、といった場合は、皮膚科を受診すべき。

「ステロイドの塗り薬を処方するので、市販薬より早くかゆみが治まる。5段階の効果の強さがあり、虫刺されのひどいかゆみには、最も強い効果のものか、その次のものを使います。局所に限られた期間塗るだけなので、ステロイドの副作用の心配はありません」

 腫れている場合は、虫に刺された部分だけでなく、患部全体に塗る。

 かくと、かゆみが増すばかりか、痕が残る。かゆくて我慢できない、寝ている間に無意識にかいてしまうという人は、抗ヒスタミン薬(内服薬)を医師に処方してもらおう。花粉症の治療薬でもあるこの薬は、かゆみを抑える作用がある。「かかないようにばんそうこうを貼る」という方法は、蒸れて菌が繁殖するリスクもあるので勧められない。

 虫刺されシーズンを何とか乗り越えよう。

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