独白 愉快な“病人”たち

点滴が生ビールに見えて…宮路オサムさん闘病生活を振り返る

宮路オサムさん(C)日刊ゲンダイ

 つまり、アルコール摂取量が多過ぎて、膵臓が自らの消化酵素で膵臓自身を消化してしまい、しかも肝臓にも炎症が及んでいたようです。

 ギリギリで手術は免れ、絶飲食と点滴が長く続きました。その中で起こったのはアルコールの禁断症状による幻覚です。

 点滴が生ビールに見えて看護師さんに「ぬるくて飲めない」と言ったり、勝手に歩き回ってしまったりしたのでベルトでベッドに固定されたり、それが飛行機のシートベルトに思えて「この飛行機はどこへ行くの?」と尋ねたり(笑い)。点滴を使ってマジックショーを始めたり、病室がキャバクラに思えたり……。完全看護の病院でしたが、何をするか分からないので、病院からの要請で女房は毎晩、病室で寝泊まりしていました。

 1カ月半後、膵臓は炎症を食い止めて固定され、幻覚も治まって無事退院になりました。担当医からは「今後一切お酒を飲まないと約束してください」と言われました。「自信がない」とボクが言うと、先生は「またお客さんの前で歌を歌い、喝采を浴びる宮路オサムを想像しただけで鳥肌が立つ。そうなることがオレの誇りだ」とおっしゃって……。この一言が酒の誘惑に負けそうになる自分を何度も引き留めてくれました。

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