日本人の胃がんの99%はピロリ菌が原因 検査と除菌を知る

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 日本人の場合、胃がんの99%がピロリ菌感染が原因と報告されているが、除菌治療によって大幅にリスクを下げられる。しかしみなさん、そもそも自分がピロリ菌に感染しているかどうか、チェックしていますか?

「お母さんにピロリ菌感染が見つかったら、おばあちゃんと子どものピロリ菌感染も疑うべき」

 こう言うのは、日本ヘリコバクター学会認定医で南毛利内科院長の内山順造医師。かつてピロリ菌は井戸水などを介して感染していた。衛生状態がよくなった今は、日本では親から子どもへ、または祖父母から孫へ、唾液を通して感染するケースがほとんどだ。

「ピロリ菌は胃の中にしかいないので、小さい子どもや孫に、親や祖父母が口移しでご飯を食べさせ感染。親がなめたスプーンを子どもに使わせる、親が噛んだものを子どもに食べさせる、といったことでも感染すると考えられています」(内山医師=以下同)

■“胃痛もないから感染していない”は間違い

 ピロリ菌感染は5歳くらいまでの間に起こる。免疫機能が不完全なため、ピロリ菌が定着しやすいからだ。免疫機能が完全になった成人では、新たな感染は起こりにくい。ピロリ菌を持っている人とキスしても、成人同士なら感染しない。いずれにしろ感染の有無は検査でないと分からない。病院へ行くべきだ。

「“胃痛もないから感染していない”と言う患者さんがいますが、ピロリ菌感染は症状とは関係ありません。感染者の多くは無症状なのです」

 ピロリ菌が自然消滅するケースもあるが、それは胃炎が長期間続き、健康な胃にあるヒダがなくなった場合。むしろ最も胃がんに気を付けなければならない状況であり、当然“検査が必要なし”とはならない。

 ピロリ菌の検査は、血液検査、呼気テスト、便または尿中抗原検査、組織検査の4通り。

「内視鏡検査(胃カメラ)とセットでピロリ菌検査を受けると保険適用になります。内視鏡は、胃がんを調べるのが目的。胃カメラが嫌でピロリ菌検査を受けたくない方は、健診で受けたバリウム検査で胃がんが否定されており、検査から半年以内であれば、内視鏡なしでもピロリ菌検査が保険適用になります」

 その際、バリウムの検査結果を持って行くこと。ピロリ菌検査はどの科でも受けられるが、「バリウム検査から半年以内なら、内視鏡をやらなくていい」と知らない医師に当たると厄介。知識を持つ消化器内科医を受診した方が無難だろう。

 言うまでもなく、ピロリ菌検査は胃がん予防のためだが、もうひとつ押さえておきたい検査がある。ABC検査だ。

 これは、胃がんのリスクを知るスクリーニング検査で、「ピロリ菌感染の有無」「胃粘膜の萎縮の程度」を血液検査で調べる。

 採血だけで済むので、内視鏡やバリウムよりはるかに負担が少ない。結果は4つの群で示され、ピロリ菌がいなくて胃の萎縮がなければ安心できる。ピロリ菌がいたり、萎縮が強い人だけ内視鏡検査などに進めばよい。消化器科や健診センターで実施されており、保険適用外だが2000円前後と安い。住居地によっては、自治体の補助金が出ることもある。

「胃がんの好発年齢は40歳以上ですが、数は少ないものの、17歳以上40歳未満でも胃がん発症の例があります。少しでも早く、ピロリ菌がいるかどうかだけでも調べることをお勧めします」

 ゲンダイ読者である親世代が感染していれば、冒頭で述べたように、愛する子どもに感染させているかも……。

 まずは自分から検査へ行こう。

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