正社員で働く発達障害の人々

子供のころから「普通の人との違い」を感じていた

一色宏治さん(提供写真)

 難しい課題は「過集中」という、ハイになったような状態でなんとかこなしたが、発表が終わるとその反動でダウンしてしまう。疲れているのに興奮状態で眠ることができず、ぐるぐる回る頭の中で、「こんなことでは、働くのは無理だろうなあ……」とぼんやりと思った。

 大学の教授に相談したところ、大学病院の受診を勧められた。

 結局、そのころ増え始めていた心療内科を受診したが、睡眠薬を処方されただけで、はっきりとした病名は与えられずに終わった。

「計画性がないので、修士論文もなかなか仕上げられない。怒りだした助教授(当時)に『もう君の論文を見ない』と言われると、それを真に受けて本当に見せなくなったんです。助教授は単にハッパをかけるためにそう言っただけかもしれないのに、物事を言葉通り受け取るのって、これもASDの特性なんですよね」と、一色さんは話す。

 結局、同級生に助けてもらって、なんとか修士論文を提出。IT系の会社に入社することになった。=つづく

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