熱中症は暑くなり始めの7月が危ない!屋内の対策に要注意

今年はすでに5月に猛暑日を記録
今年はすでに5月に猛暑日を記録(C)共同通信社

 2012~18年の熱中症による救急搬送人員数(6~9月)で、ずばぬけて多かったのは昨年の9万2710人。7月の搬送人員が最も多く、半数以上を占める5万4220人だった。熱中症対策をどうすべきか? 公立福生病院脳神経外科診療部部長の福永篤志医師に聞いた。

「人間は暑熱順化といって、暑さが続くと次第に慣れて熱中症にかかりにくくなります。実際に、気温と熱中症患者数のグラフを比較すると、気温が一気に高くなった時に熱中症患者も急増するのですが、その後、必ずしも気温の高さと患者数は一致しません」

 つまり、梅雨明けで気温が一気に高くなるこれからの季節、特に熱中症に気を付けなくてはならないということだ。

 炎天下では、多くの人が「こまめな水分補給を」と考えるだろう。しかし、屋内ではつい気を抜いてしまいがち。

「実は、熱中症の発症場所は屋内、しかも自室(住居)が最も多いのです。昨年の場所別救急搬送人員の統計でも住居が40.3%と最多で、続いて道路13.4%、屋外12.8%、仕事場10.8%の順でした」

 熱中症で救急搬送された人のほとんどが65歳以上の高齢者で48.1%。もともと体内の水分の割合が少ない上に、「体に悪いからと冷房を使わない」「水分をあまり取らない」「一人暮らしで、異常に気付いてくれる人がいない」などが考えられる。離れて暮らす老親には注意を促したい。

「私はリビングに温度計を置き、28度を超えたら冷房をつけるようにしています。自分の感覚を頼りにせず、28度以上は冷房を使うべきです。寝る時も、冷房を使うことをお勧めします」

 水分摂取は水で。お茶やコーヒーなどの嗜好品は利尿作用があるものもあり、熱中症対策の水分補給に適していない。言うまでもないが、ビールは論外。体内への吸収が速やかな経口補水液は、熱中症の症状が出てきた時や大汗をかいた時などに飲めばよく、普段は水で問題ない。一度に飲まず、たとえば1時間に1回など時間を決めて、ちょこちょこ口にする。

 熱中症の症状は、「頭がボーッとする」「くらっとする」「気持ちが悪い」「だるい」など。

「熱中症を経験したことがない人なら、疲れや寝不足と感じるかもしれない。会話もできるので、周囲も気付かない。ところがそのままいると徐々に体温が上昇し、突然けいれんや意識障害を起こしてしまう」

 だから、異常を感じる「前に」水分補給。そして、いつもと違う症状が出てきたらすぐに手を打つことが重要だ。

 福永医師も、長時間にわたる手術の後は脱水症状で熱中症と同様の状態に陥りやすく、経口補水液を飲んで症状が回復した経験がよくあるという。

■冷やすなら脇の下と足の付け根

「また、かき氷は体内を巡る血液を一気に冷やしてくれるので、頭がボーッとしてきたな、という時に食べるのにもってこいです。日中、外歩きが多い営業マンや屋外のスポーツをよくする人にはお勧めですね。さらに、首、脇の下、足の付け根など血管がたくさん集まっているところを冷やすのも有効です。おでこを冷やすのは、体全体の温度を下げる目的では不十分です」

 熱中症は、対策が遅れれば死に至る危険がある。すぐに救急車を呼ばなければいけないのは、けいれんや意識障害を起こしている時だ。分かりにくいのは意識障害。

「単にボーッとしているように見えるかもしれない。返事をしなくなったり、何を聞いても『うん』とか『はい』しか答えなくなったら、直ちに救急車を呼ぶべきです」

 暑い夏を万全の対策で乗り越えよう。

関連記事