正社員で働く発達障害の人々

自らの特性に向き合う「発達障害」は自己理解のツールだ

前向きな気持ちで仕事をする一色宏治さん(提供写真)

 発達障害にあてはまるかどうかは、所属する文化圏や環境によっても変わる。ある場所では普通に生きられる人でも、ある環境では適応できず、発達障害とされる場合もある。一色さんは「もし発達障害の特性を持っていても、本人や周囲の人が困っていなければ発達障害ではない」と考えている。その意味では、周囲への同調圧力が極めて高い日本の会社は発達障害とみなされやすい環境といえる。しかし、日本の会社では発達障害とされる人でも、おおらかな国民性の国であるとか、日本でも自由な社風の会社やフリーランスで働ければ発達障害とみなされず不適応もおこさない、ということは往々にしてあると言ってもいい。 

「大人の発達障害者はその特性を持て余しており、非常に困っています。でも、私は発達障害という自己理解のツールを手に入れたことで、だいぶ楽になりました。今は前よりはかなり前向きな気持ちで、仕事をすることができています」

 自らの特性に向き合い、得意な能力を生かして働き続けている一色さんのストーリーは、発達障害の傾向があることで悩んでいる小さい子供とその親たちにも、大いに参考になるのではないだろうか。 

(おわり)

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