Dr.中川のみんなで越えるがんの壁

厚労省が保険適用検討へ「乳がん予防切除」普及への課題

乳がん発症前に予防切除をしたアンジェリーナ・ジョリー(C)日刊ゲンダイ

 ジョリーさんの場合、「BRCA1」に変異があったといいます。この変異による乳がんの生涯発症リスクは40~80%。「BRCA2」の生涯発症リスクは20~85%。100%ではないとはいえ、高率であるがゆえ、乳がん発症前に両方の乳房を予防切除しています。

 これらの遺伝子に変異があると、乳がんのほか、卵巣がんを患うリスクも高い。ジョリーさんの母も叔母も、若くして乳がんや卵巣がんで亡くなっているのです。

 こうした影響から、日本乳癌学会は昨年、遺伝子変異がある人について、乳がんのリスクを減らすため、乳房予防切除を「強く推奨する」と指針を改定しています。今のところ、遺伝子検査も予防切除も自費で、検査は20万~30万円、手術は切除と再建費用を含めると100万~200万円と安くはありません。それが保険で受けられるようになれば、予防切除は普及するでしょう。

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中川恵一

中川恵一

1960年生まれ。東大大学病院 医学系研究科総合放射線腫瘍学講座特任教授。すべてのがんの診断と治療に精通するエキスパート。がん対策推進協議会委員も務めるほか、子供向けのがん教育にも力を入れる。「がんのひみつ」「切らずに治すがん治療」など著書多数。

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