病み患いのモトを断つ

数字で読み解く熱中症対策のヒント 肌着の着方も要工夫

熱中症は炎天下だけでない。梅雨時の今から要注意
熱中症は炎天下だけでない。梅雨時の今から要注意(C)日刊ゲンダイ

 ジメジメとして蒸し暑い。炎天下の真夏はもちろん、熱中症は梅雨時の今から要注意だ。総務省消防庁によると、5月に熱中症で搬送された人は全国で4448人。昨年の1.8倍で、5月としては最多というだけに、いつも以上に注意した方がいいだろう。調べてみると、熱中症対策にまつわる意外な数字が浮上。その数字が、熱中症対策のヒントになる。聖路加国際病院内科名誉医長で、「西崎クリニック」院長の西崎統氏に聞いた。

「気温30度、湿度60%のうち、いずれかを超えると、熱中症で搬送される方が急激に増えます。つまり、気温は30度以下でも、湿度が60%を超えていれば熱中症になる。梅雨時の今は、熱中症対策がおろそかになりやすく、要注意です」

 5月の救急搬送者は、東京が最多の370人。気象庁によると、5月の東京で最高気温が30度を超えたのは、24日から27日までの4日のみ。ほかの日は25度前後と涼しかったが、平均湿度60%超は22日に上る。

■1リットルの汗で3グラムの塩分が流出する

 5月の救急搬送者が最多を記録したのは、湿度の影響が大きい。「気温30度」は用心するだろうが、「湿度60%」も要注意だ。そんな状況で汗をたくさんかくと、脱水して熱中症になる。

「めまいや立ちくらみが初期症状で、運動している人なら足がつったりします。そういうときなら、クーラーの効いた室内で体を冷やせば回復します。水分補給はもちろん、梅干しや塩入りキャンディーなどで電解質の補給も欠かせません」

 汗かきの人だと、汗1リットルに塩分3~4グラムが失われる。一般に血液1リットル中には、9グラムの塩分が溶けているというから、3分の1が流出したことになるので大変だ。水1リットルに梅干し2個が経口補水液と同じ濃度の塩分量で体に吸収されやすい。

 衣服の熱中症対策は、半袖半ズボンが一番だが、サラリーマンはそうもいかない。そこで、工夫がいる。

「速乾や吸湿などの機能性肌着は、今や定番。高齢者は、昔からの習慣で綿の肌着を使用されている方が多いですが、熱中症対策なら機能性肌着に切り替えるのがベターです。その着方によって体温が変わりますから、試してみるといいでしょう」

■綿とポリエステルの体温上昇の違いは?

 神戸女子大の平田耕造教授は、綿100%とポリエステル100%の肌着で、発汗に伴う深部体温の変化をチェック。注目はその着方で、それぞれの素材の肌着を、皮膚とのゆとりがある着方と、密着した着方で、足湯状態で深部体温を41度にそろえてから比較した。

 機能性肌着のポリエステルの方が、体温上昇が抑制されるのは当然の結果とはいえ、ちょっと興味深い。研究結果を掲載した「デサントスポーツ科学」2003年版によると、ゆとりがあるポリエステルは0.4度の上昇だったが、密着ポリエステルは0.3度の上昇に抑えられた。綿はより体温上昇幅が大きく、密着の方がゆとりを0.1度上回る0.6度だ。

「機能性肌着はピタッとしたサイズを選び、その上からゆとりのあるワイシャツを着るのが一番涼しい」

 ワイシャツのすそをズボンから出すのは難しいが、例えば、ポロシャツなどは出した方がいい。首元のボタンを外し、すそを外に出せば、煙突効果で風が抜ける。機能性肌着の効果も加味すれば、より快適だ。

「汗は、蒸発するときに熱を奪って体を冷やしますが、だらだら流れ落ちるような汗は、体温調節と関係がありません。そこで、機能性肌着をピタッと着ることで、繊維と繊維の間に汗を吸い取って、素早く蒸発させるため、体温が上がりにくいのです」

 肌着ナシのすけすけシャツは、身だしなみのマナーで論外だ。

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