人生100年時代の健康法

男女の病気のかかりやすさや寿命の違いは染色体の違いから?

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 男性は女性より病気にかかりやすく、しかも短命です。例えば、生涯がん罹患リスク(一生のうちに1回はがんにかかる確率)は男性62%、女性は47%。男性のほうが、がんにかかりやすいのです。生涯がん死亡リスク(がんで亡くなる確率)ではもっと差が広がって、25%対15%です。心臓病や脳卒中の死亡率も男性のほうが高く、その上、自殺率でも大きく上回っています。それやこれやで、平均寿命が女性より6年以上も短くなっているのです。

 そのためか、新生児は常に男子のほうが多めです。新生児の男女比を「出生性比」と呼びますが、人種・民族によらず、ほぼ105プラスマイナス1の範囲に収まっています。女子100人に対し、男子が105人前後生まれてくるということです。ところが男子のほうが体が弱いものですから、年頃(10代後半から20代)になると、ほぼイコールに落ち着いてきます。それで過不足なくペアをつくって子供ができればちょうどいいはずです。しかし、近頃は男女とも異性の好みが厳しくなったためか、なかなかうまくいきません。イコールの意味が薄れてきました。

■Y染色体の大きさはXの3分の1

 ところで、男女の生物学的な違いは、煎じ詰めれば性染色体(X染色体とY染色体)の組み合わせの違いにすぎません。ご存じのとおり、XYなら男、XXなら女になるわけです。この違いが病気や寿命の男女差と深く関わっているのではないか、と考えるのは当然でしょう。しかし、過去数十年にわたる研究にもかかわらず、謎は深まるばかりです。もちろん、いくつかの遺伝病については、遺伝子レベルで性差が解明されています。しかし、もっと普通の病気に関しては、ほとんど分かっていないのです。

 顕微鏡で見ると、X染色体とY染色体では形が全く違うことがよく分かります。X染色体はその名のとおりX形(かなりゆがんでいますが)をしています。一方、Y染色体は、標本の出来にもよりますが、あまりY字っぽくは見えません。まあ、先人たちに敬意を払って、Y字形ということにしておきましょう。

 それよりも注目すべきは大きさです。Y染色体はX染色体の、たった3分の1しかないのです。

永田宏

永田宏

筑波大理工学研究科修士課程修了。オリンパス光学工業、KDDI研究所、タケダライフサイエンスリサーチセンター客員研究員、鈴鹿医療科学大学医用工学部教授を歴任。オープンデータを利用して、医療介護政策の分析や、医療資源の分布等に関する研究、国民の消費動向からみた健康と疾病予防の解析などを行っている。「血液型 で分かるなりやすい病気なりにくい病気」など著書多数。

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