頚椎椎間板ヘルニア 治療3カ月で改善しなければ手術が必要

左が人工椎間板
左が人工椎間板(C)日刊ゲンダイ

 首の椎間板ヘルニア、つまり、頚椎椎間板ヘルニアは首の骨(頚椎)と骨の間にある軟骨(椎間板)が本来の位置から飛び出る病気。「治療を受けているけど、3カ月経っても良くならない」という人は、手術を検討した方がいい。千葉大学医学部付属病院整形外科の古矢丈雄医師に聞いた。

 頚椎椎間板ヘルニアで飛び出た椎間板(ヘルニア)が神経を圧迫すると、首、肩、腕に痛みやしびれが生じ、ひどくなると手足が麻痺する。

「痛みやしびれなど、神経由来の症状があり、MRIなどの画像検査で椎間板が飛び出て神経を圧迫していることが確認されれば、頚椎椎間板ヘルニアの診断となり、治療開始です」

 まずは、頚椎カラーと呼ばれる装具による首の安静と、消炎鎮痛剤やビタミン剤などによる薬物治療。これら保存療法で、ほとんどは治る。ところが10人中1人くらいは、3カ月経っても痛みやしびれが消えない。すると手術が検討される。

「良くならないまま半年以上経つと、手術を受けても予後不良という報告があります」

■新治療法の登場で従来法による不具合が解消

 手術には一般的な切る手術と内視鏡手術があり、首の前側からアプローチする方法と後ろ側からの方法とがある。切る手術か内視鏡かは、医師の立場や患者の希望などで異なるので、ここでは触れない。今回注目したいのは、切る手術のうち、2017年から保険承認になった頚椎人工椎間板置換術だ。

 頚椎椎間板ヘルニアで、手術の対象となる椎間板ヘルニアが1つなら、首の前側からアプローチする手術が選択されることが多い。首の前側を4~5センチ切開し、気管や食道をよけて、椎間板ヘルニアを取り出す。

「従来法は前方除圧固定術といって、取り出して空洞になったところに自分の骨盤から採取した骨や人工骨を移植して固定する。前方除圧固定術でも症状は取れますが、固定してしまうため、首の骨本来の動きが失われる。固定した首の骨の上下の椎間板に負担がかかり、また隣り合う場所で頚椎椎間板ヘルニアを起こしやすくなります」

 頚椎人工椎間板置換術は椎間板ヘルニアを取り出すところまでは同じだが、固定をしない。

 代わりに骨の首を以前と同じように動かすことができる金属製の専用器械(写真)を設置。手術した場所の動きが保たれるため、固定術よりも上下の椎間板にかかる負担が減り、新たな頚椎椎間板ヘルニアを起こしにくくなる。

「従来法と頚椎人工椎間板置換術、どちらもメリット、デメリットがあります。従来法では飛び出た椎間板ヘルニアの取り残しがあったり、骨棘(骨のトゲ)が多少残っても、固定をすることで痛みは取れる。一方、頚椎人工椎間板置換術では、取り残しなどがあれば、症状がすっきりせず再手術が必要となることもあります。また、人工椎間板が適応となるための決められた条件を満たす患者さんしか、頚椎人工椎間板置換術を受けられません」

 海外では10年以上前から頚椎人工椎間板置換術を実施しているが、日本では慎重を期すために、治療を行える医療機関や医師には、いくつかの基準が設けられている。実施している医療機関は、日本脊髄外科学会および日本脊椎脊髄病学会のHPで調べられる。

 なお、腰のヘルニアにも以前、ヨーロッパやアメリカで人工椎間板が行われていたが、症状が期待していたほど取れず、また器械が荷重に耐えられず摩耗や破損が多く見られたため、現在ではほとんど使用されなくなってしまった。

 前方除圧固定術も頚椎人工椎間板置換術も、手術時間や入院期間は同じ。だいたい2時間の手術で、数日の入院だ。

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