後悔しない認知症

症状を遅らせるにはスキンシップも極めて大事になる

写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 こうした状況を回避するために、子どもは自発的、意識的に親に語りかける機会を増やすことだ。もともと寡黙な人は、認知症になるとさらに寡黙になりがちだし、もともとは話し好きだった人でも、話す機会が少なくなれば脳の老化が進みやすくなる。高齢者専門の病院での私の長い臨床経験からも言えることだが、家族や友人、知人らが頻繁に見舞いに訪れる高齢者の患者さんは、認知症の進行が比較的ゆっくりだ。これも、会話の機会の数と無縁ではないのだ。

■会話だけがコミュニケーションではない

 会話とともに忘れてならないのがスキンシップだ。これも、高齢者の脳を刺激する。子どもは生活の中で手をつなぐ、マッサージをしてあげる、入浴中に背中を流してあげるといった行為を心がけるべきだ。孫やひ孫を抱かせてあげるのもいい。

 最近、知人男性に聞いた話がある。知人の母親は92歳で軽度の認知症と診断されている。都内で1人暮らしをしているのだが、デイサービスにも参加せず、ヘルパーの訪問にも「知らない人を入れたくない」と渋っていた。しかし、入浴の問題がある。母親も息子に介助してもらっての入浴は拒否する。1人での入浴は危険と判断した知人は何とか説得して、デイサービスとヘルパーの訪問を受け入れてもらった。

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和田秀樹

和田秀樹

1960年大阪生まれ。精神科医。国際医療福祉大学心理学科教授。医師、評論家としてのテレビ出演、著作も多い。最新刊「先生! 親がボケたみたいなんですけど…… 」(祥伝社)が大きな話題となっている。

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