後悔しない認知症

症状を遅らせるにはスキンシップも極めて大事になる

写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 はじめのころは不満を口にしていた母親だったが、ある日を境にデイサービスやヘルパーの訪問を楽しみにするようになった。きっかけは若いヘルパーの女性が足の爪を切ってくれたことだったという。それまで、爪切りに苦労していたが、優しい態度で爪を切ってくれるヘルパーに感激したそうだ。

 知人によれば、以来、会話やスキンシップの機会が増えたためか、母親の表情も明るくなり、認知症の進行も感じられないというのだ。自分にはできなかったスキンシップの効用を改めて知り今では週1回母親宅を訪れるたびに、肩、背中、手足のマッサージをしてあげているという。

 医学的にも、スキンシップはオキシトシンという脳内ホルモンの分泌を促すことが認められている。このオキシトシンは「愛情ホルモン」とか「幸せホルモン」と呼ばれ、安心感、親近感、痛みの軽減、血圧や血流の安定、ストレス緩和などに深く関係している。会話はもちろんだが、スキンシップもまた認知症の進行を遅らせる重要なコミュニケーションのひとつだと考えておくべきだ。

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和田秀樹

和田秀樹

1960年大阪生まれ。精神科医。国際医療福祉大学心理学科教授。医師、評論家としてのテレビ出演、著作も多い。最新刊「先生! 親がボケたみたいなんですけど…… 」(祥伝社)が大きな話題となっている。

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