がんと向き合い生きていく

がん治療をするか否かは「暦の年齢」で決めるものではない

佐々木常雄氏(C)日刊ゲンダイ

 そして、このことを45歳になる娘に話したところ、「平均余命というのがあって、ネットで調べたらお父さんが80歳とすると、あと8年くらいみたいよ」と言われ、「そうか、でも8年もあるのか……。それなら、佐々木先生に聞いてみようと思った」とのことでした。

■患者の身体や精神の状態、がんのタイプによって変わってくる

 Sさんのお話を聞いて私はこう答えました。

「もし生検の結果ががんだとして、がんの治療をするかしないかは、暦の年齢で決めるものではないのです。高齢になってくると、身体能力、精神的な状況は一人一人、大きく違っています。患者さんの体の状況や精神の状況、それぞれ個々の状態によって決めます。これが高齢者に対する治療の特徴で、実年齢で治療方針が変わるわけではないのです。80歳でも毎朝2万歩も散歩される方もおられるし、階段を上れない方もいらっしゃいます。ですから、手術にしても、その後の経過にしても、個人個人によってリスクは大きく違ってきます」

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佐々木常雄

佐々木常雄

東京都立駒込病院名誉院長。専門はがん化学療法・腫瘍内科学。1945年、山形県天童市生まれ。弘前大学医学部卒。青森県立中央病院から国立がんセンター(当時)を経て、75年から都立駒込病院化学療法科に勤務。08年から12年まで同院長。がん専門医として、2万人以上に抗がん剤治療を行い、2000人以上の最期をみとってきた。日本癌治療学会名誉会員、日本胃癌学会特別会員、癌と化学療法編集顧問などを務める。

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