確実ながん予防 ピロリ菌検査・除菌メリットとデメリット

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

「確実ながん予防法」はそうないが、ヘリコバクター・ピロリ菌の除菌治療は、数少ない「確実ながん予防法」だ。感染していても大半が無症状なので、検査をしないと感染の有無が分からない。気になる疑問を、南毛利内科・内山順造院長(日本ヘリコバクター学会認定医)に聞いた。

■感染リスクの高い人は?

「親が感染者であれば、子どもの時に親からピロリ菌が感染した可能性があります。食事の口移しなどでです。祖父母と同居していた場合も、祖父母のどちらかがピロリ菌感染者であれば、親のケースと同様に感染が疑われます」

■1回で成功する?

 ピロリ菌の除菌治療は、抗菌薬2種類と、胃酸の分泌を抑える薬1種類を1日2回、7日服用。

「1回目の除菌率が80~90%ほど。ピロリ菌が残った場合は2回目を行い、除菌率は95%以上です」

■中学生からの検査や治療に問題は?

 中学生からのピロリ菌検査・除菌治療を取り入れる自治体が増える一方で、小児科医の中には慎重な姿勢を示す人が多い。安全性の問題や海外のガイドラインでは推奨していないことが理由だ。

 内山院長は、中学生のピロリ菌検査や除菌治療に対して賛成の立場。胃がんには分化型と、進行が速く悪性度が高い未分化型があり、若い人の胃がんは未分化型が多い。そして、どちらの型でも9割にピロリ菌感染が研究で確認されている。

「小児のうちに除菌治療を受けると、胃がんのリスクが下がるというエビデンスはありませんが、数は少ないものの17歳から胃がん発症の報告がある。悪性度も高いことを考えると、大きなリスク要因であるピロリ菌を17歳より前に除菌することは、非常に有益です」

 17歳より前の胃がん発症の報告はない。つまり、17歳より前なら、胃カメラで胃がんの有無をチェックしなくてもピロリ菌検査がOKだ(成人は保険適用の場合、胃カメラが必須)。義務教育である中学生の間なら自治体が介入できるので、受診率を上げられるメリットもある。

「厚木市内の中学2年生の希望者341人にピロリ菌を調べる尿検査を行ったところ、3%に感染者が見つかりました。ほぼ全員が除菌治療を受けましたが副作用の報告はなかった。消化器内科医がしっかりと診て除菌治療を行えば、中学生でも重篤な副作用の心配はありません」

 親がピロリ菌感染なら、子どもも検討した方がいい。ピロリ菌検査を先に受けて、除菌治療は後に、という手もある。

■高齢者には不要?

 高齢者の場合、「今からしなくても」とピロリ菌除菌治療が見送られるケースがある。しかし、年齢にもよるが、ピロリ菌感染者である高齢者が除菌治療を受けた方がいい理由がある。

「整形外科から痛み止め(NSAIDs)、循環器内科や神経内科から血栓予防薬(ワルファリン、NOAC)を処方されている高齢者が多い。これらの薬は消化管出血を起こしやすくし、命に関わります。そして、ピロリ菌感染者は消化管出血のリスクが高い」

 胃がん予防のためにではなく、消化管出血回避のために、高齢者はピロリ菌除菌治療を検討する。内山院長が行った研究では、除菌治療の成功度は71歳以上、70歳以下、どちらも同等で、副作用についても同等だった。

「痛み止めや血栓予防薬を服用している人、内視鏡検査で胃の萎縮があまり進んでいないことが確認された人などは、特に除菌治療を検討した方がいいでしょう」

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