役に立つオモシロ医学論文

死亡リスク増加の報告 「夜型」の生活は本当に体に悪いのか

夜型をもたらす生活環境
夜型をもたらす生活環境

 夜は早めに寝て、朝早く起きる朝型の生活は、夜遅くまで起きている夜型の生活に比べて健康に良いイメージがあります。夜遅くまで起きていると、生活習慣が乱れがちになることは想像しやすいでしょう。しかし、このような生活スタイルの違いが健康状態にどのような影響をもたらすのかについて、あまりよく分かっていませんでした。 そんななか、朝型/夜型の生活と健康状態との関連性を検討した研究論文が、国際時間生物学会誌2018年8月号に掲載されています。

 この研究では、英国の大規模データベースに登録されている38~73歳の43万3268人が対象となっています。被験者は「明らかな朝型」「どちらかと言えば朝型」「どちらかと言えば夜型」「明らかな夜型」の4つのグループに分類され、死亡リスクの他、精神疾患、胃腸の疾患、糖尿病などの発症リスクが検討されました。なお、結果に影響を与え得る、年齢、性別、人種、喫煙状況、睡眠時間、社会経済的状況や合併症の有無などの因子について、統計的に補正を行って解析しています。

 平均で、6.5年にわたる追跡調査の結果、明らかな朝型の人と比べて、明らかな夜型の人では、糖尿病が1.3倍、精神疾患が1.94倍、神経疾患が1.25倍、胃腸の疾患が1.23倍、死亡のリスクが1.1倍、統計学的にも有意に多いという結果でした。

「夜遅く寝ることが病気を引き起こしている」というよりは、残業時間が長いなど「夜型の生活をもたらし得る生活環境そのものが、健康に悪い影響を与えている」ということなのかもしれません。因果関係を決定づけるものではありませんが、健康のリスク因子として“夜型の生活をもたらし得る環境”因子は軽視できないものがあります。

青島周一

青島周一

2004年城西大学薬学部卒。保険薬局勤務を経て12年9月より中野病院(栃木県栃木市)に勤務。“薬剤師によるEBM(科学的エビデンスに基づく医療)スタイル診療支援”の確立を目指し、その実践記録を自身のブログ「薬剤師の地域医療日誌」などに書き留めている。

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