また、肺がん、胃がん、大腸がん、乳がん、悪性リンパ腫など、使用頻度が高いアントラサイクリン系の抗がん剤は、心筋に対して毒性があります。投与中も含めて短期間で不整脈、心不全、心筋障害などが表れるケースから、投与して1年以上、中には10~20年後になって症状が出現する場合もあるため、使用する際は注意が必要な抗がん剤です。
オプジーボなどの免疫チェックポイント阻害剤の登場も含め、近年の抗がん剤は飛躍的に進歩しています。ただし、よく効く抗がん剤というのは、それだけ副作用も起こりやすいという側面もあります。とりわけ、がんが多い高齢者はそもそも臓器が弱っている場合がほとんどなので、抗がん剤を長期に使用するとなおさら副作用が出やすくなり、心臓や腎臓に悪影響が及んでしまうのです。
実際、抗がん剤治療中に心臓にトラブルを起こして生活制限を受けたり、腎臓に障害が出て人工透析が必要になってしまうケースもあります。そうなると、命は救われたもののQOL(生活の質)が著しく落ちてしまったという状況になりかねません。
上皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」