上皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」

抗がん剤の副作用で心臓疾患を発症するケースが増えてくる

順天堂大学医学部心臓血管外科の天野篤教授(C)日刊ゲンダイ

 また、肺がん、胃がん、大腸がん、乳がん、悪性リンパ腫など、使用頻度が高いアントラサイクリン系の抗がん剤は、心筋に対して毒性があります。投与中も含めて短期間で不整脈、心不全、心筋障害などが表れるケースから、投与して1年以上、中には10~20年後になって症状が出現する場合もあるため、使用する際は注意が必要な抗がん剤です。

 オプジーボなどの免疫チェックポイント阻害剤の登場も含め、近年の抗がん剤は飛躍的に進歩しています。ただし、よく効く抗がん剤というのは、それだけ副作用も起こりやすいという側面もあります。とりわけ、がんが多い高齢者はそもそも臓器が弱っている場合がほとんどなので、抗がん剤を長期に使用するとなおさら副作用が出やすくなり、心臓や腎臓に悪影響が及んでしまうのです。

 実際、抗がん剤治療中に心臓にトラブルを起こして生活制限を受けたり、腎臓に障害が出て人工透析が必要になってしまうケースもあります。そうなると、命は救われたもののQOL(生活の質)が著しく落ちてしまったという状況になりかねません。

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天野篤

天野篤

1955年、埼玉県蓮田市生まれ。日本大学医学部卒業後、亀田総合病院(千葉県鴨川市)や新東京病院(千葉県松戸市)などで数多くの手術症例を重ね、02年に現職に就任。これまでに執刀した手術は6500例を超え、98%以上の成功率を収めている。12年2月、東京大学と順天堂大の合同チームで天皇陛下の冠動脈バイパス手術を執刀した。近著に「天職」(プレジデント社)、「100年を生きる 心臓との付き合い方」(講談社ビーシー)、「若さは心臓から築く 新型コロナ時代の100年人生の迎え方」(講談社ビーシー)がある。

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