ところが、女性の体には、こうした問題を回避する、巧妙な仕掛けが用意されているのです。
X染色体の不活化は、受精から2~3日後、細胞数にしてまだ100個程度の「胚」と呼ばれる段階で起こります。
この時、細胞ごとにランダムに、どちらのXを眠らせるかが決まります。それ以降はX染色体の選択は行われません。父系Xが休眠した細胞を起源に持つ細胞は、すべて父系Xが眠ったままですし、逆も同様です。
ですから、平均すると女性の体をつくる数十兆個の細胞の半分では母系Xが使われており、残り半分では父系Xが活動しているわけです。そして体全体として見れば、XY型の男性よりもバランスが取れているのです。つまり女性の体はハイブリッド構造なのです。単純構造の男性より丈夫で長持ちというわけです。
ただし、胚の段階でサイコロを振ってしまうため、どちらかに極端に偏った目が出ることもあります。父系Xの細胞が優勢な人は父親の健康リスクを受け継いでしまいがちですし、母系Xが優勢なら母親と同じ病気にかかりやすくなっているのです。また、そうしたアンバランスから来るさまざまな不調も、女性特有の健康問題です。
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永田宏
長浜バイオ大学コンピュータバイオサイエンス学科教授
筑波大理工学研究科修士課程修了。オリンパス光学工業、KDDI研究所、タケダライフサイエンスリサーチセンター客員研究員、鈴鹿医療科学大学医用工学部教授を歴任。オープンデータを利用して、医療介護政策の分析や、医療資源の分布等に関する研究、国民の消費動向からみた健康と疾病予防の解析などを行っている。「血液型 で分かるなりやすい病気なりにくい病気」など著書多数。