人生100年時代の健康法

引きこもりにも関係が? X染色体絡みの病気は隔世遺伝する

女性ではほとんど見られないが…(写真はイメージ)
女性ではほとんど見られないが…(写真はイメージ)/(C)日刊ゲンダイ

 男性はX染色体を1本しか持っていないため、そこに載っているどれかの遺伝子が壊れていると、深刻な病気になることがあります。

 前にお話しした血友病や、男児の筋力低下を引き起こす「デュシェンヌ型筋ジストロフィー」が有名です。また先天性色覚異常も、X染色体上の遺伝子が原因であることが知られています。

 これらの病気や異常は男性に多く、女性ではほとんど見られません。

 たとえば日本人男性の約5%(20人に1人)が先天性色覚異常といわれていますが、女性では500人に1人です。

 X染色体に起因する病気は、「X連鎖劣性遺伝」と呼ばれる特徴的な伝わり方をします。それは次のようなメカニズムです。

 父親がそれらの病気を持っていても、その子(男児)には病気は伝わりません。父親のX染色体を受け継がないからです。一方、女児には父親の染色体が受け継がれます。ただ母親のX染色体も受け継ぐので、そちらの遺伝子が正常なら、発病することはありません。この状態を「保因者」と呼んでいます。

 保因者から生まれる子、つまり孫には50%の確率で病気の遺伝子が伝わります。それが男児なら、ほぼ100%の確率で発病します。女児は発病せず、新たな保因者となります。

 つまりX染色体に起因する病気は、母方の祖父から男孫へと隔世遺伝するのです。また祖母が保因者であった場合も、孫に伝わる可能性があります。祖母の兄弟の中に患者がいたかどうかが分かれば、祖母が保因者かどうかを推定できます。

 X染色体絡みで隔世遺伝する病気は、いまのところ上記の難病系などを除けば、ほとんど分かっていません。しかしかなり以前から、うつ病や引きこもりに関係する遺伝子が、X染色体上にあるといわれています。気になる人は、母方の祖父やその兄弟にうつなどの傾向がなかったか、調べてみるといいでしょう。あるいは自分の父親に問題があったら、あなたのご子息に隔世遺伝するかもしれません。

 もちろん、まだ仮説の段階です。いくつかの調査から可能性のひとつとして浮かんできたものに過ぎず、今後の研究いかんで否定されるかもしれませんが。

永田宏

永田宏

筑波大理工学研究科修士課程修了。オリンパス光学工業、KDDI研究所、タケダライフサイエンスリサーチセンター客員研究員、鈴鹿医療科学大学医用工学部教授を歴任。オープンデータを利用して、医療介護政策の分析や、医療資源の分布等に関する研究、国民の消費動向からみた健康と疾病予防の解析などを行っている。「血液型 で分かるなりやすい病気なりにくい病気」など著書多数。

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