病み患いのモトを断つ

海老蔵は休演長期化 急性咽頭炎はこじらせると意外に厄介

市川海老蔵
市川海老蔵(C)日刊ゲンダイ

 回復が遅れているようだ。歌舞伎俳優市川海老蔵のことだ。15日に急性咽頭炎のため舞台「七月大歌舞伎」を休演。当初は18日の夜の部での復帰とみられていたが、その18日の公演も休演に。急性咽頭炎は、ありふれた喉の感染症だが、こじらせると意外と厄介だという。聖路加国際病院内科名誉医長で、「西崎クリニック」院長の西崎統氏に聞いた。

 関東から東北の太平洋側を中心に記録的な冷夏が続くが、来週にかけて台風の襲来とともに一転して気温の急上昇が予想される。そうなると、急増するのが、海老蔵を苦しめた急性咽頭炎だ。

「クーラーをつけたまま寝ると、翌朝、夏風邪をひいていることがあります。風邪は、鼻の症状や痰、咳などが見られますが、そういう症状が軽くて、喉の痛みがとても強いときに疑われるのが急性咽頭炎です。海老蔵さんは、声帯がある喉頭にまで炎症が広がったのではないか。そうだとすると、声がかすれたり、出にくくなったりします」

■最悪の場合、呼吸困難にも

 梨園の期待を背負う海老蔵は早期復帰を目指しているようだが、急性咽頭炎はこじれやすい。

「声が出ないのは、咽頭や喉頭の炎症が悪化した証拠で、その部分がむくんでいます。むくみが軽ければ、食事や水を飲みこめますが、強いと水を飲むのもつらく、さらにひどいと呼吸も苦しくなります。確率としてはまれですが、呼吸困難になるケースもゼロではありません。通常なら症状のピークは2、3日で、1週間ほどで軽快しますが、炎症が強い時は2、3週間かかることもあります」

 扁桃に炎症があるときも、高熱が出るほか喉の痛みなどが生じ、回復までは時間を要するという。

 ここまで読んだ人は、気づいたかもしれない。どれもこれも、夏風邪をこじらせた結果。悪化させなければ、問題ないのだろう、と。確かにその通りなのだが、海老蔵が悪化させてしまったように、そのリスクはだれしもが持っている。

「一般内科の医師は、口蓋垂(のどちんこ)や扁桃あたりを調べても、鼻や喉の奥、声帯まではチェックしません。そうすると、咽頭炎や喉頭炎の診断が遅れることがあります。正確に診断してもらうには、耳鼻咽喉科を受診するのが無難なのです」

 そういわれてみると、記者も昨年の冬、風邪かなと思って職場近くの内科で処方された薬を服用したものの、よくならず様子をみていたが、やがて悪化。喉の痛みが増し、食事もつらくなったことがある。結局、耳鼻科で咽頭炎との診断を受けて、薬を替えてもらいよくなった。

 急性咽頭炎は、“クーラー風邪”の典型だが、ちょっとした対応のミスで症状が悪化する恐れは十分ある。

「何となく喉が痛いというときは、カラオケやたばこ、アルコールは避けた方がいい。そういうときに無理をすると悪化します。症状が軽いときほど、しっかり休むことです」

 ありふれた病気ほど、甘く見ない方がいい。

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