後悔しない認知症

新たな出会いがあるデイサービスは脳を使う「新天地」

デイサービスは新しいコミュニケーションの場

 前回、92歳で1人暮らしをしている軽度の認知症女性の話を紹介した。子どもの説得でそれまで拒んでいたデイサービスへの参加やヘルパーの介護を受け入れたところ、その快適さを知り、いまではそれを楽しみにするようになった女性だ。

 こうした例は数多くある。認知症と診断されたことをきっかけに外出しなくなり、塞ぎ込むようになったものの、デイサービスに参加するようになって「人が変わったように明るくなった」という。こんな話もある。デイサービスの迎えのクルマを心待ちにする認知症の父親がいた。子どもが施設のケアマネジャーに尋ねたところ、そこで小学校の同級生だった女性と何十年ぶりかに再会し、お互いに機嫌のいい時間を過ごしているのだそうだ。一方で、夫婦でデイサービスに参加していたところ、ほかの女性と親しげに話している夫の姿を見て妻が嫉妬しはじめたなどという例もある。

 同居、別居を問わず、認知症の親を持つことは子どもに負担を強いることは間違いない。子どもがすべてを引き受けてしまえば、疲弊してしまい、仕事を辞めざるを得なかったり、肉体面、心理面での健康を損ねたりする可能性もある。「親の面倒は自分で」「親がかわいそう」「親が他人の世話になるのは嫌」などさまざまな理由があろうが、これほど不幸なことはない。そうした事態を回避するために、デイサービスなどの介護サービスを積極的に利用すべきだ。

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和田秀樹

和田秀樹

1960年大阪生まれ。精神科医。国際医療福祉大学心理学科教授。医師、評論家としてのテレビ出演、著作も多い。最新刊「先生! 親がボケたみたいなんですけど…… 」(祥伝社)が大きな話題となっている。

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