後悔しない認知症

新たな出会いがあるデイサービスは脳を使う「新天地」

デイサービスは新しいコミュニケーションの場

■介護を行う子どもにとっても負担軽減になる

 サービスを受けるためには「要介護」の認定が前提。1997年に制定された介護保険法に基づいて、自治体と民間の事業所が連携して行っているものだ。一般的なデイサービスは、内容、料金などは被介護者の収入や要介護レベル、あるいは居住するエリアによって多少異なる。基本的には、送迎付きで食事、入浴、各種のレクリエーションなどで5~7時間施設で過ごす。仕事など家族の都合に合わせて延長が可能なところも多い。家に引きこもりがちな認知症の高齢者だが、体を動かすことになるし、同世代の人間との交流機会もある。施設では介護の専門家であるケアマネジャーやヘルパーらが対応してくれるから、新しいコミュニケーションの場にもなる。

 なによりも日ごろ介護を行っている子どもにとっては、肉体面、心理面の負担を軽減できる。さらに施設のスタッフからのリポートなどで、立ち居振る舞いなど日ごろ気がつかなかった親の新しい面を知ることにもなる。先に述べた嫉妬心に駆られた女性などは「結婚して60年。はじめて夫が歌っている姿を見た」とオカンムリだったそうだ。認知症の高齢者にとってデイサービスの場は、いろいろな意味で新たな出会いの場であり、まさしく「脳を使う場」でもあるのだ。

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和田秀樹

和田秀樹

1960年大阪生まれ。精神科医。国際医療福祉大学心理学科教授。医師、評論家としてのテレビ出演、著作も多い。最新刊「先生! 親がボケたみたいなんですけど…… 」(祥伝社)が大きな話題となっている。

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