夏の“クーラー病”対策 医師がスパイスカレーを勧める理由

スパイスには漢方の生薬と同じ薬効があるものも
スパイスには漢方の生薬と同じ薬効があるものも(C)日刊ゲンダイ

 そろそろクーラーの出番だが、クーラーのかけ過ぎは「クーラー病」の原因になる。漢方薬剤師の久保田佳代さんに、東洋医学から見た「クーラー病」への対策を聞いた。

 久保田さんによれば、クーラー病というのは、「冷え」。東洋医学では、病気のひとつとして考えられているという。

「夏にクーラーで体を冷やし過ぎると、秋、冬に夏バテや慢性的な疲労、胃腸不良、風邪やインフルエンザなどにかかりやすくなるなど、さまざまな不調が出てきます」(久保田さん=以下同)

 最高気温30度以上の真夏日にクーラーを27~28度前後の“適温”に設定するのであれば、熱中症対策として大いに活用すべきだ。

 問題は、外気温とクーラーをかけた室温との差が5~6度以上の場合。2つの温度差は5~6度以内がちょうどいいといわれており、それを超えると体にダメージを与える可能性がある。

 クールビズでオフィスなどの温度は昔よりは高めとはいえ、スーツ姿の男性より薄着の女性が「カーディガンやひざ掛けが手放せない」と言っていたら要注意だ。

「寒いオフィスにずっといる人はもちろん、オフィスと外を行ったり来たりする人にもダメージが大きい。人間の体には恒常性があり、夏は汗を出し体内を冷やし、冬は体から熱を逃さないようにします。ところが現代の夏は、外では暑さ対策、屋内では寒さ対策に体が働く。これを数時間ごとに繰り返すと、自律神経が乱れ、頭痛やむくみ、だるさ、めまい、食欲不振などが出てきます」

 電車やバス、デパートや商店、レストランなど“寒い”場所はあちこちにある。いかに体を冷やし過ぎないか、夏の間、意識するしかない。

「自宅ではクーラーを27~28度に設定。冷たい飲食物をあまり取らない。シャワーで済ませず湯船に漬かる。これらを基本に、さらに私が体の不調の相談に来られた方に勧めているのが、スパイス多用のカレーです」

■ルーを使わず市販のスパイスで簡単に作れる

「スパイス」と呼ばれているものの多くには薬効があるためだ。実際、スパイスには漢方の生薬に置き換えられるものがかなりある。

「カレーに欠かせないターメリックは『鬱金(ウコン)』で、肝機能改善や健胃効果があります。クローブは『丁字(チョウジ)』といって食欲不振や胃腸の冷えによく、強壮効果も期待できます。フェンネルは『小茴香(ショウウイキョウ)』で、利尿・発汗を促す。食欲不振改善や胃腸の調子を整える作用もある。消化を助け胃液を出しやすくするカルダモンは『小豆蒄(ショウズク)』です」

 ほかに、コリアンダーの「胡荽子(コズイシ)」、シナモンの「桂皮(ケイヒ)」、オレンジピールの「陳皮(チンピ)」など。

「これらのスパイスと、漢方ではほとんど使わないですがクミン(馬芹)を油で炒め、スープと具材を入れて煮込んだらカレーになる」

 すべて揃えるのは大変という方が多いだろう。その場合は、ターメリック、コリアンダー、クミン、レッドチリペッパー(唐辛子のパウダー)を使えばいい。

 いろんなレシピがネットなどで紹介されているが、作り方は実に簡単。基本は多めの油でスパイスを炒め香りを油に移し、玉ネギのみじん切りを炒め、すりおろしたニンニクとショウガを加えて水を足し、トマトピューレを加えれば、“カレーのもと”の出来上がりだ。

 作るのも面倒だという人は、今夏は本格スパイスカレー店巡りでクーラー病対策を。

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