病気を近づけない体のメンテナンス

【肌】紫外線の功罪…皮膚のダメージは60歳ごろから表れる

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 健康な肌を保つ大きなポイントのひとつに、5~8月に最も多くなる紫外線対策がある。しかし、人は紫外線を浴びることでビタミンDを皮膚で合成させている。ビタミンDはカルシウム代謝を調整して骨を強くしたり、最近では、大腸がんなどのがん予防に関係することが分かっている。そのメリットとデメリットに、どう折り合いをつけるかが肝心になる。

 紫外線による皮膚への害について、山手皮フ科クリニック(東京都新宿区)の豊福一朋院長はこう言う。

「紫外線による皮膚の急性傷害には、『日焼け』と『免疫機能低下』があります。夏は皮膚の免疫が低下するので、口の周りに水ぶくれができる単純ヘルペスが再発しやすくなります。そして、何年も時間をかけて表れる慢性傷害で問題になるのが、シミやシワの原因となる『光老化』と『皮膚がん』の発生です」

 夏の炎天下に1時間皮膚を日光にさらすと、紫外線は1個の表皮細胞のDNAに100万個の傷を作るという。通常、この傷は細胞の酵素によって2日以内に修復されるが、大量に日焼けしたり長年日焼けを繰り返したりしているうちに、間違って修復されたDNAが傷となって蓄積し、突然変異を起こして皮膚がんの原因になるのだ。

 紫外線のダメージの蓄積は60代ごろから「日光角化症」という病変で表れる場合もある。顔や頭部にできやすく、表面がカサカサしていて、赤くまだら状や黄色いかさぶたの付いたシミのような見た目をしている。いわゆる“前がん症”で、放置すると約20%の確率で転移の恐れのある「有棘細胞がん」に移行するとされるので要注意だ。

「光老化は加齢による皮膚の老化とは質的に違う変化で、皮膚が厚くゴワゴワになり、色も濃くなります。紫外線は皮膚を透過して表皮の下にある真皮で活性酸素を発生させます。その活性酸素によって皮膚の張りを保つコラーゲンや弾性線維が破壊され、毛穴の開き、たるみ、深いシワとなって表れるのです」

 これらの紫外線による慢性傷害を防ぐには、これ以上、DNAの傷や活性酸素の発生を増やさないこと。光老化は紫外線防御対策によって、多少なりとも元に戻る可能性があるという。

 紫外線の対策は、屋外に出る時は露出している顔や腕などに日焼け止めを塗るのが効果的。日焼け止めには「紫外線吸収剤」と「紫外線散乱剤」がある。散乱剤は塗ると白浮きしやすいが、肌の刺激が少ないので敏感肌の人に向いている。吸収剤は白浮きしにくいので男性に向いているが、敏感肌の人には刺激になる場合がある。一長一短あるので選ぶ際は、薬局の店員に相談するといい。

 それでも、日焼け止めを使うのは面倒というなら、恥ずかしがらずにせめて日傘を使ってもらいたいという。日傘は直射日光の90~95%を遮断することができるので、紫外線だけでなく熱中症対策にもなる。しかし、これらの紫外線対策によって体内で産生されるビタミンDは不足しないのか。

「日焼けするほどの日光浴は、害にしかなりません。日本の緯度からすると、両手の甲くらいの面積が15分ほど日光に当たる程度、日陰なら30分くらい過ごす程度で、食品から平均的に取るビタミンDと合わせれば十分とされます。ビタミンDを多く含む食品は、魚類とキノコ類です」

 紫外線にさらされた肌にいい栄養素もある。皮膚に発生する活性酸素を除去する抗酸化ビタミンの「ビタミンC」だ。多く含む食品は、オレンジ、赤ピーマン、ブロッコリー、キウイフルーツ、菜の花、ゴーヤーなど。ビタミンCはコラーゲンの生成や維持にも必要になる。さらに、ビタミンEと一緒に取ることで抗酸化作用を高める効果がある。ビタミンEは、ひまわり油、ウナギ、モロヘイヤ、ツナ缶、アボカドなどに多く含まれる。

「スキンケアのローション(化粧水)にも、ビタミンCが配合されている製品が多くあります。ビタミンC配合ローションにも日焼けを抑えたり、活性酸素を除去する作用があります。1日1回でもお風呂上がりや寝る前に、日光が当たった部分に塗るだけでも肌のお手入れになります」

 紫外線は目に見えないからこそ、ダメージの蓄積に気づきにくい。肌の若さを保つには、夏場の日傘とビタミンCがポイントといえるだろう。

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