100歳まで歩ける歩き方と靴選び

1日6000歩で十分 正しく歩けば筋力維持に1万歩は必要ない

若いときに鍛えたからーは、もはや通用しない
若いときに鍛えたからーは、もはや通用しない

「100歳まで歩き続けるためには、正しい歩き方、正しい姿勢、正しい靴選びが必要だ」と言うのは、JCHO東京新宿メディカルセンターのリハビリテーション士長で、理学療法士の田中尚喜氏だ。

「姿勢や歩き方が悪いと、中高年から筋力はどんどん低下していきます。若い時にスポーツで鍛えたから、というのはもはや通用しません。筋力がある人はよく歩けるからますます歩くようになり、筋力が維持されますが、筋力がなくてすぐ疲れるからと歩かなくなると、ますます筋力は落ちていきます。100歳まで歩くためには、中高年のうちから姿勢と歩き方をしっかりしたものにすることが必要なんです」

 田中氏によると、筋肉は、瞬発力のある「速筋」と、持久力のある「遅筋」の2つに大きく分けられる。中高年が張り切って激しい運動をして、つい痛めてしまうのは速筋のほうで、遅筋はゆっくりと収縮する筋肉なので筋肉痛を起こしにくく、疲れにくい。「座る、立つ、歩く」といった生活する上の基本動作で使うのは主に遅筋なので、中高年はこの遅筋を鍛えることを心がけるべきなのだという。

 筋力を鍛えるときは、頑張り過ぎはNGで、無理のない程度のトレーニングを長く続けることを心がける。動かすスピードも、速くするのではなくゆっくりでいい。トレーニングの前後には、体を伸ばすストレッチを行うことも大切だ。 例えば、歩く動作を支えるお尻の大臀筋を鍛えるトレーニングとして、あおむけに寝て片足を床につけ、もう片足を膝を伸ばしてまっすぐ上げてお尻を持ち上げ3秒キープ。これを左右の足で3回ずつ行う。これなら時間もかからないし、ジムに行く必要もない。家でいつでも行えるので、継続的に行うにはピッタリだ。

 太ももを支える内転筋にふさわしいトレーニング法はこうだ。まっすぐ立った姿勢で足を少し開き、膝頭のあたりにクッションか二つ折りにした座布団を挟む。そうして内ももに力をギューッと入れて3秒キープ。これを3回から5回程度繰り返すだけ。これなら、テレビを見ながらでも行えるので、無理なく続けることができるだろう。

「立ち方も大切です。立つときはお尻の筋肉である大臀筋を意識して、しっかりと立つ。これだけで曲がっていた背中が伸びて、腰も持ち上がります。この姿勢をキープするためには、日頃から大臀筋を鍛えておく必要があるわけです」

 悪い姿勢を矯正するためには、1日に何回かつま先立ちをして、長腓骨筋と後脛骨筋という筋肉を緊張させるのも効果的だという。

「歩くとすぐ疲れてしまうという人は、体の筋力が低下しています。ウオーキングについての健康番組や健康記事では、『1日1万歩歩こう』などと言いますが、実は筋力を維持するには、そこまでの歩数は必要ありません。正しい歩き方で歩けば、1日6000歩程度でも十分に歩く筋力は維持できます。そのぐらい歩けるようになると、日々のちょっとした買い物や用事でもいちいち車を使わずに歩いていけるようになりますから、自然と歩いて筋力が維持される。そうすれば、好循環の始まりです」

 まずは足から健康をキープすることが、超高齢化社会の必須科目なのだ。

 (おわり)

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