Dr.中川のみんなで越えるがんの壁

円楽は3週間入院 肺がんの脳転移は治療の順番が延命を左右

三遊亭円楽さん(C)日刊ゲンダイ

 そのベストな治療の組み合わせが、転移した部位にピンポイントで照射する定位放射線と分子標的薬になります。分子標的薬は、EGFRが変異しているタイプに効果を発揮するEGFR阻害剤です。4種類が保険適用になっています。

 従来の脳転移の治療は、放射線の全脳照射が主流。余命はせいぜい半年でしたが、画期的な治療法の登場で、5年を超えることも珍しくありません。だからこそ、ピンポイント照射で、認知機能を守ることが大切なのです。

 もうひとつ重要なのが、治療の順番。エール大学の研究グループは、①「定位放射線治療↓EGFR阻害剤」②「全脳照射→EGFR阻害剤」③「EGFR阻害剤↓定位放射線か全脳照射」に分けて、生存期間を比較。すると、①が46カ月、②が30カ月、③が25カ月と定位放射線を先に治療する方が、有意に生存期間が長いのです。

 日本の現状は、EGFR阻害剤で先に治療する傾向があります。もし脳転移が見つかったら、まず定位放射線治療を受けるのが賢明です。

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中川恵一

中川恵一

1960年生まれ。東大大学病院 医学系研究科総合放射線腫瘍学講座特任教授。すべてのがんの診断と治療に精通するエキスパート。がん対策推進協議会委員も務めるほか、子供向けのがん教育にも力を入れる。「がんのひみつ」「切らずに治すがん治療」など著書多数。

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