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重要な栄養素も多く含まれている 赤身の肉は体に悪いのか

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 赤身の肉やハム、ソーセージを多く取るとがんになりやすいというのは、言い方を変えれば、それらには発がん性があるということです。そんなふうに聞くと、もう赤身の肉やハム、ソーセージは食べないようにしようと思われる方が多いかもしれません。しかし現実はそう単純でもありません。肉にはタンパク質や脂肪、鉄分やビタミンB群など重要な栄養素が含まれており、いい面も多くあるからです。

 たとえば日本人に関していえば、肉の摂取による動物性タンパクと脂肪が脳出血を大幅に減少させたという歴史があります。かつての日本人の脳卒中には、血管が詰まる脳梗塞に対して、血管が破れる脳出血の割合が欧米に比べて高いという特徴がありました。脳出血は、動物性脂肪の摂取が少なく、コレステロールが低い人に多いことも明らかにされています。

 しかし今では日本人の脳出血は激減し、その背景には、戦後多くの日本人が獣の赤い肉を多く食べ、コレステロールが高くなったことがあります。

 魚を多くして、赤身の肉を減らそうというのは、魚をほとんど食べず、ステーキばかりを食べている人にとっては重要なメッセージかもしれませんが、肉も魚もほどほど食べている人にとっては、そのままの食事を続ければいいだけであって、肉をやめて全部魚に変えるというような極端な食事をしたほうがいいということではありません。そんな極端な食事は、かえって脳出血のような別の病気を増やすだけかもしれないのです。

名郷直樹

名郷直樹

「武蔵国分寺公園クリニック」名誉院長、自治医大卒。東大薬学部非常勤講師、臨床研究適正評価教育機構理事。著書に「健康第一は間違っている」(筑摩選書)、「いずれくる死にそなえない」(生活の医療社)ほか多数。

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