ストレス社会の生き延び方

運動、交流、趣味…定年後にボケないためにやっておくこと

あなたの趣味は何ですか?(京都にある「認知症カフェ」に集う人たち)/
あなたの趣味は何ですか?(京都にある「認知症カフェ」に集う人たち)/(C)共同通信社

 厚生労働省によると、認知症の有病者は462万人と、65歳以上の高齢者に占める割合は15%に達する。7人1人が認知症を発症していることになる。認知機能を維持するためには運動、他人との交流、そして好きな趣味を楽しむことが効果的なのだという。

「90歳で死んだ場合、どんな感じですか? 誰に囲まれていますか? まずは、その光景を想像してみてください。これは情熱を傾けられるものを見つけるための問いかけです。不安やストレスに悩まされない人たちは『好きなことをする』習慣を、もしくは好きな趣味を持っています。あなたの趣味は何ですか?」

 答えに窮する人は少なくないのでは。

「でも、ご安心ください。ここでは、好きなことを見つけるための具体的なメソッドを紹介したいと思います」

 まずは、「1人でできること」×「数人でできること」、また「外で(晴れた日に)できること」×「室内で(雨の日に)できること」の4つの枠を作る。次に「運動系活動」×「文化系活動」の2枠を加え、8マスにする。

「A4用紙などに表を書いて貼っておき、書いたものを眺めながら自分の人生をかけてやりたいことを意識しましょう。そして、それに情熱を傾ける。これを持っているビジネスパーソンは、本当にストレス知らずです」 例として、1人でできることは日帰り旅行、ランニング、観劇、読書、料理、専門の勉強、短歌など。数人でできることは山歩き、スキューバダイビング、将棋、コーラスなど。

「この表を書いたら次に自分はどういう趣味、どういう居場所が欲しいかを書き足してみてください。時間やお金の制限がなかったらという前提で自由に。例えば、『ろくろを回す』『陰陽五行説を学ぶ』『ステンドグラス』『手の込んだ料理を作る』『豪華客船で世界一周』など。いずれは定年で仕事を辞める時を迎えることでしょう。それまでにぜひ、好きなこと、やりたいことをすべてのマスに5つずつ書き込めるくらいまで、意識して趣味を増やしていただければと思います」

 会社以外の心の存在場所(=よりどころ)は、言わば自分のホームグラウンドのようなもの。職場で心が折れそうになっても、ここに来れば心が落ち着き、エネルギーが回復できる。そして定年後もやりがいになる、そんな場所をつくるのだ。

「地域の少年野球の監督をされている方は、会社でうまくいっていなくても週末には監督として慕ってくれる子どもたちがいるので、『自分は大切なんだ』と思えるのだと言います。囲碁クラブに入っている方は『どんなに忙しくても週末には行かなければ』と会社と違うところに軸を持たれています。複数の軸を持つことで、一つの軸が倒れても大丈夫なようにしておくことが心の健康を保つ秘訣と言えるでしょう」

 好きな趣味を充実させることは不安対策、ストレス対策、そしてボケることへの対策となる。 =構成・中森勇人

武神健之

武神健之

東京大学医学部大学院卒。一般社団法人日本ストレスチェック協会代表理事。年間1000件の健康相談、ストレス・メンタルヘルス相談を行う。著書に「職場のストレスが消える コミュニケーションの教科書 上司のための『みる・きく・はなす』技術」(きずな出版)などがある。

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