医師の常套句「様子を見ましょう」の真意

高血圧編<1>135/85前後は「生活改善を頑張りましょう」

 医師は、患者さんにしばしば「様子を見ましょう」と言います。その状況が、薬を替えたタイミングなら、それからの数値がどう変わるかしばらくフォローしましょう、といった意味に受け取れるでしょう。

 そうはいっても、医師の性格もたぶんに影響するでしょう。万が一の医療訴訟を考慮して、自己防衛本能から予防線を張るための材料として使うような人もいるかもしれません。ケース・バイ・ケースでいろいろな要素が含まれる言葉ですが、できる限り中庸の立場で「様子を見る」の本当の意味を解釈しましょう。

 初回は、高血圧の方の診察です。高血圧治療の指針が今年4月、5年ぶりに改定されました。患者さんにとって一番見逃せないのは、130~139/80~89㎜Hgを「高値」血圧としたこと。それまでは「正常域」でしたから、「高値」という名称に不信感を持った人もいるでしょう。「高血圧なのか?」と。

 診察室で血圧を測定すると、135/85前後の方はたくさんいます。ガイドラインの改定で、正常ではない「高値血圧」が数多く診断されることになります。しかし、薬物治療をスタートする目安の血圧が「140/90以上」であることは変わりません。

 つまり、「高値」血圧では、合併症があるケースを除いて、降圧薬を使わずに減塩や運動などの生活改善で正常域を目指すのです。そう、医師はそんな患者さんに「様子を見ましょう」と言います。その心は――。

「まずは薬を飲まず、塩分や脂っこい食事を控えたり、よく歩いたりして生活改善に気をつけて、血圧は朝食前の家庭血圧でフォローしましょう」

 そんな意味です。それで患者さんの血圧が安定していれば、次の診察も「また次も様子を見ましょう」となります。

 患者さんは毎回毎回、「様子を見ましょう」と言われると、「しっかり診てもらえているのかな?」と不安になるかもしれませんが、安定した数値に伴う「様子を見ましょう」が続くことは問題ないのです。

 なんでこんなまどろっこしい基準改定が行われたかというと、75歳未満の人が目指すべき降圧目標も設定されました。それが、130/80未満です。脳卒中や心筋梗塞などの予防が目的で、高値高血圧はそこに近いのがミソ。重大病の予防をより強く意識付けたいことが見て取れますから、「様子を見ましょう」を続けることが、高血圧治療では一番なのです。

(梅田悦生・赤坂山王クリニック院長)

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